ブログ出張所(短編小説)

2008/02/02
22:10
ドリーム ドリームさんのプロフィール
ここでは皆さんのブログ等で
発表した作品を投稿する、ブログ出張所です。

短編物でお願いします。
感想を書かせてもらいます。

もちろん自らの作品も掲載します。
分野問わず。

レス(発言)

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08/02/02 22:31
ドリームさん
返信する  -    1 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
コント小説

【当選、おめでとう御座います】

 チリリ〜ン
 親   「もすもす、うちのセガレですか? ちょいとお待ちを」
 オイラ 「へい、もすもす」
 女性  「おめでとうございます。見事当選しました!(^^♪」
 オイラ 「ふぇ? なにが<m(__)m>」

 女性  「一億円です・・・▲○△☆な訳ですよ♪♪♪」
 オイラ 「はあ(@_@ オラぁ、そんな応募してねぇど。」

 女性  「○○さん誤本人ですよね?」
 オイラ 「ふんだ・・・で一億円いつ貰えるダニ」

 女性  「いいえ。一億円が当たる権利が当たったんですよ〜♪」
 オイラ 「ホゲ? もう一回言ってくんろ・・・一億円をくれんのかや?」
 女性  「ですから当たる権利です! 権利が当たったんです♪」

 オイラ 「権利・・・そんなのイランだに。応募なんて知らんがな」
 女性  「コンピューターに誤登録されてます。おめでとうさま〜♪」
 オイラ 「ほんだから、本人がしてネ〜って言ってるが〜!!」
 女性  「ですから! 誤本人さんが!・・・(ブツブツ)」

 オイラ  「アンタねぇ・・・いい加減にせんと、サツに言うどー! 怒」
 女性  「あなた頭おかしいんじゃないの?」 (←オラも言われた)
 オイラ 「おかしいのはオメエだ〜〜〜!!」 ガチャ☆

 するってえと、またすぐ掛かってきた。チリリ〜〜ン
 オイラ 「もすもす・・・ホゲッ またあんたか。なんだべさ」 
 女性  「勝手に切らないでください、話が終わってません」
 オイラ 「なに言うだぁ 勝手に掛けて来たの姉ちゃんだっぺ」
 女性 「大変失礼な事を申し上げました。これだけは聞いて下さい」

 一転して、穏やかな甘〜〜い声を出して来た。
 仕方なく、受話器に耳を当てていると、恐ろしい事を言い始めた。

 女性  「誤説明が不十分で申し訳ありません。誤解のないように
説明する為に明日そちらに男の方が伺いますので、宜しい御座いますか?」
 なんか遠まわしに脅しを掛けてきた。
 普通、こう言うことを言われたら、小心者はヒビッてしまうのだが。

オイラ  「いい、来なくていいテバ、手羽、テラレバ」
 女性  「あら? 行かれると困ることがあるのですか?」 強気だ。
オイラ  「違う!! 困るのはそっちだ。ああ〜〜良く聞け!オイラの
事ちゃんと調べてくんだろうなぁ、おらあ山○組舎弟で、小桜組のもんだ
ぞ〜〜! ゆっくり話しを聞かせてもらうべぇ」
女性 「・・・沈黙・・・あ! やはり間違いでした」
ガチャ!! ピーピーそれっきり電話が来ることはなかった。

あ〜〜〜言い忘れた。
オイラは、山○幼稚園こざくら組のセンセイだじょ。

★(尚、誤は御のことで、間違いではなくコント流です)★
08/02/03 11:02
ドリームさん
返信する  -    3 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
ストラップさん、おはよう御座います。
朝起きたら路面が真っ白の雪ですよ。

早速のご指摘ありがとう御座います。
こう云うコント物は好きなんですが
ほとんどト書きでね、状況を表現するは難しいですね。

そうそう掌編と短編は、字数にしてどのくらいを指しのでしょう。
他にもショートショートと表現している人も居ますが。

この作品は、迷惑勧誘電話の撃退をコメディー調にアレンジ
して見ました。結構日常生活にも笑える話が埋まっているものですが
また探してみます。

今度ぜひストラップワールド文学を載せてください。
楽しみにしています。
08/02/03 13:13
返信する  -    4 : ストラップ  
>>2はもう不要でしょうから、削除しておきますね☆
僕はドリームさんの作品、好きですよ。

「短編」という言葉自体が、もっと広い意味を持っているのだと思います。
各社の賞等では、原稿用紙換算で50とか70以内で募集している様ですよ。

こういう原稿用紙1〜2枚分のものは、語弊を避ける為に掌編と書く方が無難だと思いました。
08/02/17 22:59
ドリームさん
返信する  -    5 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
【平成 戦国時代】(ショートショート小説)


 「それでは犯人(ホシ)は明智光英だと言うのか?」
 「ハイ大物(だいぶつ)課長、その通りです。ただ明智は行方をくらましてます」
 「しかしなぁ、明智は殺された小田信長社長の、信頼の厚い部下だろう? 
動機はなんだ。なぜ小田社長は本能寺マンションで暗殺されたか、それを探れ」

 「それが二人だけに約束された、秘密があったようなのですが」
 「それなら伊達、その秘密がなんだったのか探って来い」

 本能路警察署の捜査は難航していた。
捜査を担当した捜査一課、伊達正宗刑事は部下を二人連れて、小田産業
株式会社の秘書室長、豊臣秀秋を尋ねたが、数日前から主張中との事だった。
それから数日後、明智が死体で発見された。

 「おい伊達!これは一体どう言うことだ。操作が進んでるのか。あ〜」
 「分かりません。なぜ明智が殺されたのか社長の小田と明智との、秘密の
約束が鍵を握ってると思われますが」

 「豊臣室長は出張先から帰って来たのか?」
 「ええ、しかしその出張先のアリバイがどうも怪しいですが、今ひとつ
証拠がありません」
 「では、豊臣が秘密裏に社長の仇を討ったと言うのか」

 「いゃあそれはどうでしょうか。まずその約束の秘密がなんだったのか
探る必要がありそうですね」
 それから更に数日後、刑事伊達の必死の操作でその秘密が明かされた。

「やっと分かりましたよ課長、明智が社長を殺した動機が」
「おう良くやった。それでどうした」

 「ええ、小田社長は新しいプロジェクトが成功したら明智を支社長に
抜擢すると約束していたそうで。しかし、小田社長は約束を無視して更に
次のプロジェクトを依頼した事が動機らしいです。何度もいい様に使われ、
次第に憎しみが重なり我慢の限度を超えたものと思われます」

「そうか、そんな密約があったのか。それで明智を殺した犯人は誰なんだ」
「それが竹中一兵衛が自首して来ました」

「なに!? 竹中と言ったら豊臣の部下じゃないか」
「ハイ、動機がハッキリしないですが、でも自白と証拠が一致してます」

そして、この事件は解決したが、次期社長には豊臣秀秋が就任し、社名を
豊臣産業とした。それから数年後、豊臣産業は徳川工業に買収されたそうだ。


”400年の歴史を現代に置き換えて、流行と歴史は今も繰り返される”
08/02/29 05:38
奈央さん
返信する  -    6 : 奈央   奈央さんのプロフィール
【蝶々の羽】

彼女は群青色の空の下で、ゆっくりクルクルとまわっていた。
天を見上げながら。
何か異国のうたをうたいながら。冷たい太陽の光が、彼女の背中まである髪の色を少し茶色に透かせてみせた。
彼女のリズム。
彼女の唇
何も無いものに語りかけるてのひら。

僕はいつもみたいに、少し離れたところで彼女をぼんやりと見ていた。
彼女の眼球に映し出される映像や絵画はどんなものだろうと考えつつ。

彼女がふと止まって、こっちを見る。
『ねえ、この続きってなんだっけ?』
よく透き通る、子供にも似たちょっとぶしつけな喋り方。
僕はこっちの世界に一時舞い戻った彼女に微笑みながら答える。
『知らないよ。だってぼくは最初からその歌を耳にしたことが無いんだよ』
意外そうに見開く目。
『そうなの?つまらないわ』
天を見上げるのをやめ、地をじっと見つめる。
続きを思い出しているのかもしれないし、蝶々みたいな彼女の思考はヒラヒラと、鮮やかに、危なげに、もう違う世界へ行っているのかもしれない。
パターンがあるようで、無いのだ。
『わたし、行かなくちゃ』
彼女の目は何処も見ていなかったが、口調は凛として響いた。
冷たい風が吹き抜けた。
相変わらず空は青一色で、白い雲は一つも見当たらない。
僕の足元には陽だまりが落ちている。
『何処に?』
『何処かに。大丈夫。少ししたら帰ってくるわ』
そう言うが早いか、彼女は身をひらりと翻して駆け出して行ってしまった。
何日間か、彼女は戻ってこないだろう。
いつものことだ。
そして僅かな不安におそわれることもまた、いつものこと。
僕は心ならずとも、彼女の背中を見送りながら、姿が視界から消え去ってしまっても、まだ立ち去れないでいた。
揺れる陽だまりを踏みつける。
彼女の気配は直ぐに消失。
どのくらいか、僕はほうけていて、自らの岐路にたどりつく。
彼女を映画みたいに再生出来たらな、と温かい紅茶を飲みながら思う。
08/03/01 11:32
ドリームさん
返信する  -    7 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
初めまして真央さん、投稿ありがとう御座います。

【蝶々の羽】読ませて戴きました。

とても表現力が豊かに描かれてますね。
彼女は天に召された人なんでしょうか。

彼の問いかけに時々やって来て、微笑む。
ロマンテックでありながら、少し悲しいストーリー
女性ならではの感性いいですね。

素晴らしいショートショートありがとう御座います。
またの作品を楽しみにしております。

私も蝶々に因んだ作品があります。
こんど載せてみます。
08/03/02 22:36
ドリームさん
返信する  -    8 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
これはショートショートと言うよりも詩に近いですが。

(花と蝶)

私は高原に咲く雑草の花
私の兄や姉達は昨年の秋に、散って逝ったのよ
そして今年は私の番
その為に昨年から準備しているの、一瞬の青春の為に
私は厳しい冬の積雪や木枯らしに耐えて
やっと私は春を迎えたのよ!

誰も居ない高原の片隅で、気持ちよい春の風をうけて
やっとやっと青葉を広げる事がで来たのよ。
とても辛かったのよ 必死に寒さに耐えてここまで出来たの。

でも私は雑草、誰も見てくれないけど寂しくないわ!
やがて初夏を迎えて、私、一生懸命に努力して
小さいけど赤い花を咲かせる事が出来たの
見て! 私の晴れ舞台を、青春の美しさを
でもここは草原の片隅、誰も見てくれない雑草の花

いいわ 私一人でも美しく着飾って高原に咲くの
ここは私の晴れ舞台、一人で青春を楽しむの、だから嬉しいわ
でも、もっと嬉しい事があったの。
やはり小さいけど蝶々さんが、私を誉めてくれたの
とても綺麗だって言ってくれたの、嬉しかったわ

だから私、蝶々さんの為に一生懸命に沢山の花を咲かせたの
蝶々さんと私はいつも一緒、まるで恋人同士のように・・・
今日も真夏の日差しを浴びて、蝶々さんと語り合うの
でも・・・でもね、最近、蝶々さんが来てくれないの
私は心配しながら、いつまでも待っていたんです。

誰か観て欲しいの、この美しく短かい青春の姿を 
でも此処は高原の片隅
私は名もなく 今年もひっそりと咲くの
そして誰からも惜しまれる事もなく
そっと夏の終わりと共に散って行くの
その短い夏が終ろうとした時、ついに花は力尽きて
やがてその花びらはポトリと落ちた・・・。

その側に寄り添うように、蝶の死骸が残されていた
高原の夏は短くそして冷たい、やがて北風が流れて
花と蝶の死骸が、冷たい風に流されて高原に舞った。
08/03/12 00:32
ストラップさん
返信する  -    10 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
その曇天とは対照的に、その顔は実に晴れやかであった。
私は、あの人があの様に嬉しそうな顔をしようとは、夢にも思わなかったので、大層意外だった事を記憶している。初めて見た笑顔だった。
心労の為に、髯も髪も真っ白で、げっそりと痩せ細っていたが、そこには堂々とした一人の武人の誇りが見える。
私も将軍の帰郷を寂しく思いながらも、本当に悦ばしく思った。
しかしあの日のあの空の、何と暗示的であった事だろう。

私の師とも言うべき人物、于将軍は、名を禁といい、泰山郡鉅平県の人である。筋骨隆々としたその姿は、如何にも前時代の武人という雰囲気を纏っていた。
于将軍は中平元年甲子の年、黄巾の乱が起きると、鮑信の呼びかけに応じて従い、王朗という将軍を良く輔佐した。この後、エン州
が青州黄巾賊の侵入を許すと、陳宮に伴われ寿張を監督していた棗祗に見出され、曹公の軍の中核となった。この後于将軍は、一軍
を率いて中原中を転戦し、二張楽徐の四将に劣らぬ戦功をあげる。建安の初め、温候が徐州を制圧すると、真っ先にこれに当たり、
強靭な敵軍に対し良く善戦した。当時の温候の軍を見れば、成廉、魏越を筆頭に、侯成、高順、宋憲、魏続、張遼、陳宮と、錚錚た
る顔触れであったし、陳寔の孫にして陳紀の子、羣の軍規が精兵で知られた集団を形成していた。屈強な騎馬と、精悍な猟兵とで知
られた温候の軍である。善戦が如何に難事であったかは、想像に難くない。この為曹公は、活躍のあった于将軍を股肱の臣と頼りに
し、重用する事になる。
建安二十四年八月。劉備が漢中王に即位すると、荊州に専行権を持つ関羽が、曹仁の樊城に攻撃を仕掛けた。曹公は于将軍に命じ、
それを救援に向かわせたが、この年は長雨が続き漢水が溢れた為、武運無く、于将軍は七軍を失う。この為于将軍は已む無く関羽に
降伏し、江陵城に繋がれる事となった。そしてその翌年の十月、我が軍が関羽を討ち荊州を領土に加えると、于将軍は我が軍の預か
るところとなったという訳である。何と数奇な人生であろうか。

建安二十四年十二月。我が軍が麦城の戦いに勝利し、臨沮からの報せが届くと、江陵で大規模な祝勝が開かれた。凱歌を歌う人々が
溢れる時、于将軍と、その身の回りの世話をしていた私もその中にあった。しかし歓び溢れる人々の中に有って、于将軍だけはその
様な表情を見せなかった。それは無論、魏への忠誠から、政治的理由の故に嬉しくはなかったのかも知れない。しかしこの様な席で
祝いの言葉一つ言わなかった将軍の剛直は、捕虜としてあまり巧いやり方ではなかったであろう。于将軍はその無表情を、虞小父に
咎められる事となった。
「祝勝の場に有って、その不景気な面は何だ!貴様は降伏したのであるから、我等を少しは愉しませてはどうだ!」
虞小父という人は、潔い人を愛する余り、降伏した人、裏切った人、納款した人等を殊更憎むという難しい人であった。己の道徳観
念に確りと芯を持っている人ではあったが、しかしそれを信奉する余り、他人にそれを押し付けがましく説く人でもあったのだ。こ
の為、虞小父にとって敵に降伏した于将軍は、軽蔑すべき人種の内であったのである。この時于将軍に向けられた言葉も、それは矢
張り厳しいものであった。
しかし、
「おお、それは妙案。曹操は配下にも芸楽の習得を推奨したと聞き及んでおります。于将軍も無論、音楽には深く通じておられます
し、ここは一つ聴かせて戴こうではありませんか。本日の余興としては、悪くありませんな」
と、宴会の席には必ず姿を現す鄭氏が小父の言葉にこう大声で述べると、
「うむ。余も曹操が仕込んだという、武人の楽には興味がある」
と、奥の大行皇帝陛下も申された。
虞小父の罵倒は、鄭氏の機転によって将軍の演奏を聞く為の言葉へと変質してしまった。鄭氏という人は優しい人で、弱き者を見る
と、助けずにはいられない、という人であったのだ。私も含め、後にも多くの人々が鄭氏には救われたが、この時鄭氏の言葉は、于
将軍を助ける為に発せられたのである。
それで虞小父は、
「貴様、演奏が出来るなら、何かやってみよ」
と言う破目になった。
虞小父の言葉に将軍は、
「では篳篥を」
と短く答え、無表情のまま篳篥を取り出す。
しばらく火鉢で指と篳篥を暖めると、将軍は静かに吹き始めた。
08/03/12 00:34
ストラップさん
返信する  -    11 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
「静かに」と今述べたが、しかしそれは静かに感じただけで、実際の音量の事では無い。将軍の肺活量と、篳篥の精度の為、騒がし
かった空間全体に、その調べは届き亙った。人々は皆、その美しい旋律に気付き、思い思いの動作を止め、自然と将軍の篳篥を愉し
む事になった。
静かに始まったそれの優美さに、人々は皆、雅を感じ、その涼しさを味わう。清涼感すら溢れるその音色はどこか楽しげで、心地好
いと思うほどなのだ。私も、場にいる他の人も皆、于将軍の腕前に驚いてしまった。それは無骨な音楽を想像していた我々の考えを
、全く打ち砕くもので、腹の底から勇気が湧いて出る様な、そんな優しくも勇ましい、何とも陽気な曲であった。場の空気がうねる
様な感じという表現で、お解かり戴けるだろうか。正しくその様な感じであった、としか謂い様が無い。
于将軍の指は、一見ゆっくりと、しかし実際は恐るべき速さで、即興の楽曲を紡ぎ出していった。将軍の真面目に過ぎる性格が、基
本的奏法を反復して練習させた為であろう。将軍の演奏は、基本に裏打ちされた確かな技術を基とした、大変素晴らしいものであっ
た。
我慢が出来なかったらしく、最初に竽を担当する楽師が演奏に加わると、琵琶が入り、笙が入り、打ち物が入り、筝が入りと、
次々と多くの楽師達が将軍の演奏に加わっていった。将軍の演奏には、そういった気安さがあり、そして誰もが思わず参加したくな
る様な、そんな不思議な魅力があったのだ。虞小父でさえ、「やられたな」という顔で、笑いながら酒を煽り、于将軍の音楽に酔う
事を楽しんだ位だった。
多くの楽師達が加わり合奏となると、于将軍は音量を落とし、主旋律を他に任せ、周りに合わせる様な吹き方に変更をする。それで
も于将軍の篳篥は、要所要所で存在感を示し、滾々と美しい伴奏を繰り出した。
この頃になると、場にいる人に、愉しげな表情をしていない者は、唯の一人しかいない、という状態だった。無論その一人とは、無表情な于将軍自身の事である。
席にある人皆が、にこやかな表情をしていた。誰もが楽しんでいた。演奏に体を動かさずにおれる者等、最早唯の一人もいなかった
のだ。私は、こんなに皆が愉快に笑って聴いた演奏を、他に知らない。
演奏が終わると、皆は一瞬遅れて喝采し、于将軍と提案をした虞小父には、褒美までが出される事になった。私は于将軍に、演奏が素晴らしく感動をしたと、興奮気味に伝えたが、将軍は
「捕虜が仕方なく小手先の技術で吹いただけだ。感動する事など一つも無い」
と、素っ気無く応えたのみであった。
08/03/12 00:36
ストラップさん
返信する  -    12 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
「曹公の治めた魏国とは、どの様なところだったのでしょうか?」
少年の残酷さで、私はこう、于将軍に尋ねてみた事がある。将軍の強い望郷の念を知っていたならば、出来た質問では無かっただろう。
私の問いに将軍は一度だけ唸り、そして
「平坦で長閑な風景の中に、山らしくある山、丘らしくある丘、川らしくある川と、豊かな自然が混在している風靡な土地だよ。雲
は美しい形を毎日違えて見せ、その形には何とも言えぬ趣がある。空は抜けるように青く、地は雄大で、風は頗る心地好い。雨が降
り過ぎる事もなければ、日が照り過ぎる事も無い。暑過ぎる事も無ければ、寒過ぎる事も無く、大変に心地好い。風光明媚な上に過
ごし易い、暮らすには理想的な土地だ」
と、少し懐かしそうに答えた。
今考えると于将軍は、雲の形にまで「美しい」という表現をしている。帰郷を願う人は皆、異常なまでにその土地を美化させたがるが、これは望郷の念としては、かなりの重度の美化であろう。
「その様な事よりも、曹公自身の治国はどうだったのです?」
と、私が聞くと、
「人々は皆勤勉で、田畑を耕す事に喜びを覚えている。兵達は屈強で、軍規に乱れなく、訓練を拒む者はいない。食料の不足も無け
れば、他の禍の種も無く、皆がにこやかな笑顔で暮らしていける理想の場所、と、そうなりうる地だと思う。魏王もそう思われてい
るが故に、その実現の為の勤勉を惜しまれないのだよ」
と答えた。
「伯先。私はここを悪い土地だとは謂わぬが、しかし捕らわれの身であるし、懐かしい人もいない。気候も何だか古傷に痛むし、水
の味が馴染まない。だから、私にとっては中原こそが最良の土地なのだよ」
と寂しく謂う将軍の顔を見た時、初めて私は将軍が故国を酷く懐かしんでいる事を知った。そして、我々との生活が、将軍にとっては苦痛である事も。
08/03/12 00:37
ストラップさん
返信する  -    13 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール

私は当時、于将軍の邸宅の裏庭で、隠れて剣術の稽古をしていた。無論隠れてせずとも良かったのではあるが、そこは少年時代の気
恥ずかしさで、何と無く人に努力を見せる事を好まなかったのである。下手だという事を隠したかったのかも知れない。
ある日の夕暮れ。私が稽古を一段落させ、休憩をしていると、そこにひっそりと于将軍が現れた。他に人など、普段から多くはいる
筈も無いのに、何故か人に隠れる様にして来た感じがしたので、私は非常に慌て、咄嗟に隠れてしまった。何が起こるのかと息を殺
し、じっと伺っていると、将軍は懐から篳篥を取り出し、そしてそれを突然に吹き始めた。
静けさを切り裂く様に、甲高い音で始まった将軍の演奏の、何と荒々しかった事であろう。それは嵐が吹き荒ぶ様な荒々しい、激し
い音の連続だった。しかもそれがきちんと楽曲の体裁を保っているのである。
隠れていた私は、元よりじっと聴いているつもりではあったが、その始めの一小節を聴いた時、既に金縛りにあった様に動けなくな
ってしまった。それはそれ位衝撃的な演奏だったのだ。今までに聴いた事のある演奏とは、迫力の次元が違い過ぎた。
出される音の高低は無茶苦茶で、音域は一つの演奏とは思えない程幅広い。篳篥という楽器が、これ程高い音を出せるとは知らなか
ったし、これ程低い音を出せるとも知らなかった。そして、それはとても真似が出来ない程早く、目まぐるしい勢いで音楽が紡ぎ出
された。
私は、力強い音の奔流に圧倒されてしまい、口を閉める事を忘れてしまっていた。激しく吹かれるその音は、裏庭の木々をざわめか
せる程だった。将軍の篳篥から発せられる音圧に、身体を押え付けられる様な烈しさだ。私はこの時、あの人の演奏を、自分が言葉
として「凄い」としか表現できない事を感じてしまう。しかしこれは、私の言語能力に問題があった訳では無いだろう。それだけ将
軍の気迫が凄まじかったのだ。
篳篥は、激しく吹き鳴らされたが、その荒々しさにも関わらず、大きな悲しみが感じられた。篳篥の高い音、くぐもった音は、将軍
の心がそのまま音として発露していたのだ。そして私は理解していた。今、笛を吹く事で、将軍は泣いているのだと。
音は将軍の荒れた心であり、調は将軍の悲しみであったのだ。その演奏は、叫々とした悲痛の声なのだ。強い望郷の念が、将軍にこの曲を吹かせたのであろう。
将軍が祝勝の時に吹いた愉しげな篳篥を、自身では「小手先の技術」と言った。その時は将軍の謙遜と思ったが、今はそうでは無か
った事が良く解る。確かにあれは、この時の様な、噭々と魂を表に出す様な演奏では無かったのだ。唯の技術的演奏にしかすぎ
なかった。
08/03/12 00:38
ストラップさん
返信する  -    14 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
少年時代の私は、大人の「男」は泣かないものだと思っていた。
しかし今は解る。
その精神構造が、涙を流す事を許さないだけに過ぎないのだ。泣かないのでは無く、泣けないだけに過ぎない。
男と雖も、悲しい事もあれば、辛い事もある。その様な時に、声を出して泣けたら、どんなに楽な事であろう。意地も誇りも、何も
かも捨て去り、いっそ大声を上げて泣き叫べば、どんなに救われるかわからない。
でも駄目なのだ。
一滴の涕さえも、零れる事は無い。
男は、己に男である事を科した時点で、己の為に泣く事をその精神が許さなくなるのだ。本人がどんなにそれを望んでも、涙を流す
事は許されない。流される事は無いのだ。只、唯、胸の張り裂けるような思いに蜿蜒と耐え、悲しみを乗り越えるしか無い。男が泣
く事を許されるのは常に、他人の痛みの為であるか、人の優しさに触れた時でしか無いのだ。男とは、何と不器用な生き物であろう
か。
男は泣く事を許されぬが故に、大きな悲しみに耐えるには、別の手法を見つけねばならない。
そして于将軍の場合は、それが音楽であったのである。

仮に取られた。この為に于将軍は、魏に帰される事となった。
于将軍は喜び魏に帰ったが、矢張りそこでも已む無い降伏を詰られたという。于将軍は帰国の後、多くの心無い辱めを受け、それに
憤り、その為病を発症し、死去されたと聞いている。我が軍との架け橋になれたかも知れぬ人物であった事を考慮せずとも、残念な
事だと思う。
将軍は帰国の際、初めて私に笑顔を見せてくれた。今ではそれも懐かしい。
于将軍は募り積もった故国に帰り、何を思ったのであろうか。
私には想像する事しか出来ない。

08/03/13 20:33
ドリームさん
返信する  -    15 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
ストラップさん久し振り、これは三国志ですか。
流石は得意分野ですね。
それも高度な内容で綴られていて、それと比較すると私のショートショート
なんかは子供の、お遊びのように思えて来ますよ(汗(~_~;))

漫画で現在連載中の(覇)と云う劉備玄徳を主人公としたものがあります。
原作者は武論尊氏。設定は劉備玄徳は倭人(日本人)であったという
設定になってる所が面白いですね。

最近では飛躍し過ぎて、なんと邪馬台国から軍船を率いて卑弥呼が
やって来て、劉備玄徳の活躍に乗じて中国制圧を企む筋書きになっ来ました。
ストラップさんに、言わせたら邪道ですかね(笑)
08/03/14 03:19
ストラップさん
返信する  -    16 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
僕の文章にしては柔らかいんですけど、今読み返すと不親切な作品ですね。
短く音楽小説を書いてみようと思って書きました。タイトルは「故国」です。

「は」最初の頃はチラッと見たのですが、未だ続いていたんですね。
「下調べをあまりしてないのかなぁ〜」とは思いましたが、あのぶっ飛んだ内容は悪いと思いませんでしたよ。
慥か第一話から卑弥呼出てますよね?
08/03/15 09:43
ドリームさん
返信する  -    17 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
ストラップさんも読んでいたんだ。
うんうんそういえば、最初の頃、卑弥呼出ていたような気がする。

私はビックコミックとスペリオールは、創刊号から読んでますが
???ヤバ 時間です。続きは帰って来てから。
08/03/15 22:24
ドリームさん
返信する  -    18 : ドリーム   ドリームさんのプロフィール
あのゴルゴ13が今度深夜放送で劇画で、放送されるようです。
以前は高倉健、千葉真一で二度実写版で映画になったけど
ヒットしませんでしたね。
なんたって口数が少ない主人公ですから、原作と同じように
主人公の出番が少ないのが原因かも(笑)

かわぐちかいじ氏の太陽の黙示録、スケールが大きく面白いですね。
その他に『沈黙の艦隊』ジパング』など有名ですが。

最近は漫画からテレビドラマ、映画化するのが多いですが
それだけ内容が濃いんでしょうね。
日本の漫画が世界中で、翻訳出版してるのが分かるような気がします。
08/03/16 00:26
ストラップさん
返信する  -    19 : ストラップ   ストラップさんのプロフィール
大分テーマから外れてきてますね(汗)

>>17
「は」最初の方は見ていましたよ。
「趙雲が女性だった!」のあたりまでですけど(汗)

>>18
『沈黙の艦隊』はあんまり好きじゃ無かったんですよね。潜水艦好きなのに。
かわぐちかいじ氏のイデオロギーに共感できないのが原因かもしれません。でも物語の見せ方は秀逸でしたね。
『ジパング』は艦長が降りるあたりまで読みましたが、それ以降はさっぱりです。
昔『イーグル』という漫画を連載していましたね。
未だ手塚治虫や石森章太郎が連載していた頃は、偶に読んでいましたけど、今は殆どその雑誌は読まないです。

自分、潮書房時代の宗方教授は好きだったのですが(横山光輝が「三国志」を書いていた漫画雑誌に書いていたのです)、ビックコミ
ックに移ってからはパワーダウンした様に感じ、もう単行本すら買ってないです。
10/05/10 15:35
智太郎さん
返信する  -    21 : 智太郎   智太郎さんのプロフィール
 帰りの修善寺道路のドライブインいちごプラザで伊豆の土産品であるわさび漬やひものを購入した時の写真ですが、靜岡
県東部地方:伊豆も自宅から車で20分あれば、たどり着く地域でありますが、私共、3人は近所のK氏さんの病気完治を待ちながら、
起業 独立をも延期中ですが、伊豆は風光明媚で気候も最高であり、この地を都内等から、たまに来るレジャーに使う地だけでは、
もったいなさ過ぎると痛感し、今の所は「太陽光発電機設置展示場」「介護支援協力」「障害者・高齢者介助に伴う食事援助」と銘
打ってますが、「伊豆という地域」をも、何かしらに縁させて、網羅した起業 独立のネタに出来ればと・・・私は感じたのでした。
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