『コズモポリス』/ドン・デリーロ

『コズモポリス』/ドン・デリーロ

2000年のニューヨーク。若くして投資会社を経営する主人公は、自分の周りにあるすべてにリアリティを感じられないでいる。莫大な資産、鍛え上げた肉体、株式の動きを見抜く才能、特殊改造されたハイテクの豪華リムジン、優秀な部下、ボディーガード、専属の医師による毎日の健康診断、愛人たち…彼は資本主義社会の上澄みのありとあらゆるものを手にしている男だけれど、ある日、自ら進んでそのすべてを投げ捨て、破滅に向かって突き進んでいくことを決めてしまう。それはまるで、自己破壊によってシステムの外部に脱出しようとする試みのように見える。