少しのきっかけで
街の片隅にある薄暗いパチンコ店。その店内では、昼夜問わず煌々と光る電飾と耳をつんざく音楽が鳴り響いていた。その音に吸い寄せられるように、今日も一人の男が店内へと足を踏み入れる。名前は拓也。30代半ばの彼は、かつては普通のサラリーマンだったが、いつしかギャンブルにのめり込んでいた。拓也の生活は、ギャンブルによって形作られていた。給料が入ればパチンコ店に行き、勝てばさらに深みにハマり、負ければ取り戻そうとさらなる金を注ぎ込む。その繰り返しだった。かつては家庭もあり、愛する妻と娘がいた。しかし、ギャンブルに取り憑かれた拓也は家族を顧みる余裕を失い、ついには離婚を言い渡された。「今回こそ、取り戻せる…」そうつぶやきながら、拓也は台に座り、玉を投入する。彼の目は機械の画面に釘付けになり、周囲の景色や音はもはや意識の...少しのきっかけで
2025/01/18 11:49