神無月の巫女二次創作小説「禁色の圃(ほ)」(弐)
「…きれいね、こんな景色はじめて見たわ」「貴女にね、ぜひともこの眺めを教えてあげたかったの」川ほとりにひろがるその神田は、秋の実りの季節を迎えて、一面みごとな黄金いろに染まっていた。身重になった稲穂は、静かな風の流れにまかせ、頭をゆるやかに揃えて垂れていた。さながら、手招きしお辞儀をしてみせる、たおやかな女人の並びのごとく。もしその稲穂にそっと触れてみようとするならば、それはやんごとなき姫が牛車から降りる際に添えられた手のように、この手のひらに素直に預けられてくるだろう。この水田一枚から収穫される米は、蒸して飯にされ、神饌として朝夕、豊受大神のおはす御饌殿に供えられる。それは彼女たちの時代からさかのぼること数百年間、村の神職によって一日も怠ることなく続けられた神事であった。不思議なことに、これまで国を苦しめてい...神無月の巫女二次創作小説「禁色の圃(ほ)」(弐)