短篇小説「来店ルーティーン」
泣ける曲を口ずさんでいる男が街角を歩いていると、本当は喫茶店をやりたかった八百屋の前でいつもニヤニヤしている男と出会った。泣ける曲を口ずさんでいる男といつもニヤニヤしている男は中学時代の同級生であったが、特に仲が良いわけではない。「やあ、久しぶりだね(ニヤニヤ)」 いつもニヤニヤしている男はこのときもやはりニヤニヤしていた。もちろん泣ける曲をくちずさんでいる男も、泣ける曲を口ずさんでいたからこそそう呼ばれている。二人は十年ぶりに出会ったが、十年前に偶然遭遇したときも二人はその状態だった。だから泣ける曲を口ずさんでいる男は、いつも泣ける曲を口ずさんでいる男と言ってもいいかもしれない。これからはそ…