姫神の巫女二次創作小説「さくらんぼキッスは尊い」(十二)
「千華音ちゃん、あのね。わたしのこれまでのわがままなお願い、聞いてくれてありがとね」ううん、わがままなんて、そんな…。千華音が首を振る。そんな今更、お別れみたいなことを切り出すなんて。これまでのお付き合いの想い出をまとめて、片付けるような、そんな言葉を言わないで。私たちにはまだあるの、まだひと月はあるの。想い出はまだ生まれて、花ひらいて、また続いていくの。なのに――悲哀の帯びた目つきをしてしまう千華音。媛子は、先ほどから握りしめた巻貝を見せてくれたのだった。「巻貝ってね、種にもよるけれど、ほとんどが右巻きなんだよ。左右が鏡像でどちらも等しくあるって思われていたけれど、そうじゃないんだって。でね、千華音ちゃんがくれたのは、左巻きの貝。すごく珍しいものなんだよ」「そうなの…?媛子の髪の色に似てるから、きれいだと思っ...姫神の巫女二次創作小説「さくらんぼキッスは尊い」(十二)