カナリアはうたをワスレテ
捨てられちゃうのかなぁ。飛べないよねぇ。もうとっくに、飛び方なんて忘れちゃったし。飼いならされた小鳥はさぁ、どんなにあの空に憧れてもね。ガゴの中がお似合いなんだよ。 小さく笑って彼が云う。 彼の眼は、なにを視ている? カゴの中で哀しそうに揺れているあの小鳥? それとも、 硝子に映る自分の姿。 飼い慣らされた小鳥は飛べない。 藻掻き抗い叫ぶことすら諦めて。 ゆるゆるとその生暖かい世界に首まで浸かって。 翼の意味など、とうに忘れた。 あんなに憧れて焦がれていた光の世界は。 結局は彼をただ摩耗させるだけで。 なにもできない俺はただそれを黙ってみていることしかできなくて。 飼い慣らされた鳥は飛べない。
2025/01/12 14:22