長編小説、ノベルシリーズ

「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何？」を、科学的、文学的、ときどき叙情的（？）に解き明かす恋愛論ブログです。

シランケン・重松シュタイン

シランケンの不純愛講座

アニメ・マンガ・映画・ドラマ・フィギュアスケートの感想とオリジナルイラスト・小説がメインです。コメント歓迎します。

瑞原唯子

瑞原唯子のひとりごと

　——今日からひとりで登校する。　迷ったすえ、創真は必要最低限のことを記した端的なメッセージを翼に送った。　かじかむ指先でアプリを閉じ、電源を落としてスマートフォンをスクールバッグに放り込む。そして白い息を吐きながら、チェック柄のマフラーをもぞりと口元まで引き上げると、寄りかかっていた自宅の塀から背中を離して歩き出した。　きのう、フェンシング対決で負けてから翼と顔を合わせていない。　——今日は先に帰っ...

瑞原唯子

虚空碧海 - オリジナル恋愛小説

「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何？」を、科学的、文学的、ときどき叙情的（？）に解き明かす恋愛論ブログです。

シランケン・重松シュタイン

シランケンの不純愛講座

通話が終わったら、けそけそに文句を投げつけてやろうと思っていたのに。ソウマが思いがけず洩らしたのは、こんな問いかけだった。「ユキヒトさん、つまらない質問を受け取ってくれますか？」「僕でよければ喜んで。質問がつまらなくなるのは、回答者の受けとめ方が悪いせいですよ」茶化しはするが、訊ねたことにはそれなりの答えをくれる相手でもある。少なくとも、発した問いかけを惨めだと思い返すような仕打ちはしない。質問がつまらないのは、そもそも質問者があらかじめ想定した答えを相手から引き出せないことに、不満があるからでもある。自分に都合のいい答えを期待して投げたのではない。答えの出しにくいような問いを発することの気後れもある。だからこその愚問なのである。ソウマはひと呼吸おいてから、「叶わなかった願いはどこへ行くのかな」「願いは願いのま...神無月の巫女二次創作小説「夜の桎（あしかせ）」（十四）

万葉樹（よろずは　いつき）

陽出る処の書紀

「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何？」を、科学的、文学的、ときどき叙情的（？）に解き明かす恋愛論ブログです。

シランケン・重松シュタイン

シランケンの不純愛講座

　東條の家をあとにして、創真と翼はいつものように並んで帰路につく。　そのころにはもうすっかり夜の帳が降りていた。住宅街には家のあかりと街灯くらいしかないのでかなり暗く、ひっそりとしている。自分たちの足音だけがやけに響くような気がした。　ふっ——ひそかについた小さな溜息は、白いもやになる。　日中はそうでもなかったが、いまは厚手のダッフルコートを着ていてもぶるりと震えるくらいだ。きっと鼻も赤くなっている...

瑞原唯子

虚空碧海 - オリジナル恋愛小説

いじわるなユキヒト青年、ほうれ、ほうれ、ようく見なされ、とばかりに押し付けてくる。いなかっぺの男児が、精巧な蛙やムカデのおもちゃで女の子をからかうのに似ている。「そこらで脱皮したんでしょうね。蛇の皮はお財布に入れておくと金運アップするんですよ。生まれ変わりと長寿の象徴でもありますし」「…気味が悪いです」しっしっと追い払おうとする手つきにも、ユキヒトはめげない。だいたい虫食いだらけの古文書だの、泥まみれ灰だらけの遺物だのを好んで手にする人種なのだからして、平気の平左なのだろう。「それにしても、こんなに胴回りが大きそうなのは初収穫ですね。人間の腕の太さぐらいはありそうだ。ひとつ、どうですか。切り取って、分けてあげますよ」「これっぽっちも要りませんからッ！」拝殿があることを忘れて、思わず声を荒げたのが気まずくなったの...神無月の巫女二次創作小説「夜の桎（あしかせ）」（十三）

万葉樹（よろずは　いつき）

陽出る処の書紀

「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何？」を、科学的、文学的、ときどき叙情的（？）に解き明かす恋愛論ブログです。

シランケン・重松シュタイン

シランケンの不純愛講座

ユキヒトの体内から、機械が震える音が聞こえてきた。ぶぅうううううん。伸縮のないロボットの心臓が鳴くような音で、聞くたびによい心地がしない。音源を探す時間がかかるほど、その不気味さが夜の静けさに押し入ってくるのだった。以前は、トランスの利いた前奏部分が素敵な着メロにしていたのに。「言えない、聞けない、見えない、幻だけ」というサビのテンポの良さが聴くと癖になり、終曲に向かい「何処へ行こうとも、ただ君だけを護りたくて、逆らっている」と熱烈に歌い上げる、あの女性歌手の歌がよかったのに。ユキヒトからＣＤを借りてみたが、ソウマでもうっかり泣き出しそうないい歌だった。そこたしのシンガーソングライター名乗りのやりがちな気障ったらしいフレーズの羅列ではなく、素朴であるが、それだけに力強く、胸にぐっとくる名曲なのである。誰にでも、...神無月の巫女二次創作小説「夜の桎（あしかせ）」（十二）

万葉樹（よろずは　いつき）

陽出る処の書紀

アニメ・マンガ・映画・ドラマ・フィギュアスケートの感想とオリジナルイラスト・小説がメインです。コメント歓迎します。

瑞原唯子

瑞原唯子のひとりごと

　連載　 　ローズマリーの詩　 　19　許してくれるなら…破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。「千の丘」という店でパンを焼く、おじがかつて愛したひと。その人は、「許されるなら」と、かつての恋人との再会を望んでいる。そのことを伝

シランケン・重松シュタイン

「おとなの恋愛小説」倶楽部

「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何？」を、科学的、文学的、ときどき叙情的（？）に解き明かす恋愛論ブログです。

シランケン・重松シュタイン

シランケンの不純愛講座