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オリジナル小説発表

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オリジナル小説発表
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ジャンル不問、オリジナル小説の発表場所です。オリジナル小説の記事を書いた時はぜひ、TBお願いします。 -------------- ご参加ありがとうございます! 当テーマに送信していただける記事の基準はこちらです。 【受付できる記事】 ○小説記事  ○小説の更新お知らせ記事、目次・解説記事 △性描写のある小説 → 目立つ所に性描写があることの断り書き、対象年齢表示あればOK 【お断りする記事】 ×小説以外(日記、評論など)がメインの記事 ×性描写があるのに何の断り書きもない小説 ×犯罪奨励、詐欺アダルト宗教、そのほか不法行為や勧誘に関わるブログの記事 ×二次小説 (二次小説とは…他人の創作物を使った小説のこと。古典のリメイクも不可)※オリジナルの歴史時代物は歓迎します うるさくてすいません。どうかご協力お願いします。 わからないことあれば管理人ブログ「ガイドライン」へ。
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34,755件
参加メンバー
894人

オリジナル小説発表の記事

2020年11月 (1件〜50件)

  • #恋愛小説
  • #諸葛孔明
  • 2020/11/30 22:52
  • 2020/11/30 17:48
    短編小説「土下男」

    土下男はすぐに土下座ばかりするから土下男と呼ばれている。名前はまだない。なんてことはないが誰も彼を本名で呼んだりはしない。彼が死んだら、間違いなくその戒名には土下男の三文字が含まれるだろう。だが土の下に埋められるにはまだ早いと言っておく。 土下男は学生時代から土下座ばかりしていた。宿題を忘れても遅刻をしても買い食いをしても土下座一発で許された。 しかし人はどんな奇抜な動きにも見慣れるものだ。飽きられるにつれて、その効力は着実に弱まっていくことになっている。ならばこちらも強度を上げねばならない。そのためにはどうしたら良いか。土下男はまず、地面に頭をつけている時間を増やすことを考えた。 不祥事を起…

  • 2020/11/30 14:10
    短編小説「不向き村」

    花粉症の木こりが木を伐っている。その木の枝には高所恐怖症の猿がいて、猿の目線の先に広がる海には、ビート板で泳ぐ海兵隊が大量に浮かんでいる。全員が全員、ビート板なしでは泳げないのだ。 海兵隊のひとりがビート板から手を滑らせ溺れかけると、これまで誰にも聞き取れたことがないほど声の小さな、つまり教官には向いていない教官が海兵隊全体に彼を助けるよう指示を出すが、もちろんその声は誰にも届かず波に飲み込まれる。溺れかけた海兵に気づいているのは木の上の猿だけで、この猿は泳ぎが何よりも得意でバタフライすら可能だが、それ以前に木から降りることができずいっぱいいっぱいだ。 なぜそんな猿が木の上に登ることができたの…

  • 2020/11/30 14:10
    短編小説専門ブログ開設のご案内

    本日はお足元の悪い中、お集まりいただきありがとうございます。え、今日は雨など降っていない? もちろん雪も?ならばそこの肥溜めに、片足でもズボリと突っ込んでいただければと。是非ともお足元が悪くあっていただかないと、事前に用意していた挨拶がどうにもしっくり来ないもので。というわけで(ここで「どういうわけで?」というのは、言わない約束です)、このたびここに短編小説専門ブログを開設することに相成りました。というか、勝手にそうしました。というのも、僕は2008年の末から『泣きながら一気に書きました』https://tmykinoue.hatenablog.com/という嘘泣きブログをやっているのですが、…

  • 2020/11/29 23:00
    十一月二十五日、金木犀―integrity

    散りてなお、11月25日誕生花キンモクセイ金木犀十一月二十五日、金木犀―integrity黄金から琥珀いろ光る、霜月が終わる。そうして時は尽きて、さあ、発とう?「ほら、そろそろバスの時間だろ?」うながして笑いかけて、ベンチから立ち上がる。白衣の足もと風を透く、肌ふれる午後に君が言った。「ううん、次のバスだからね。これ見てよ?」澄んだテノール笑ってページをめくる。陽だまり開いた写真はるかな空、連なる白銀につい笑った。「きれいに撮れたな、」「だろ?光もウンと良かったんだよ、雅也さんと登った時みたいにキレイだったね、ちょーど風が止んでくれて登れたよ、」きれいな瞳が笑ってくれる、自分を呼んで。この眼ざし幼いころから変わらない、結局のところ無垢だ。「ほら、これも見てよ?ホントきれいだろ、雅也さんも懐かしいんじゃない?」呼...十一月二十五日、金木犀―integrity

  • 2020/11/29 10:56
    教えてくれ

      ある日私は、通り行く人たちが、私のことをじっと見ていることに気づいた。 それはまるで、何か得体の知れないものでも見るかのように、恐ろしそうに、脅えていた。 ふと視線が合うと、すぐに目をそらすのだ。 子供たちは私を指差して驚き、笑い出す子もいた。 私は何だか不気味に思った。 私の顔に何かついているのだろうか、そう思い、不意に取り出した鏡を見てみたが、いつもと変わらない姿がそこにはあった。 どこへ...

  • 2020/11/28 09:45
    ヒーローの敵

      宇宙から、変な敵が降ってくるようになって、早一年。 でも大丈夫。 地球には強い味方、「イズミくん」というヒーローがいたのです! 今日も人々は、宇宙からやってくる、謎の宇宙人に襲われていました。 宇宙人は、そこらへんに生えている木を投げ飛ばし、ビルを破壊し、手あたりしだいに食器を投げたりするのです。 とても危ないので、見ていられません。 人々はいっせいに口をそろえて、「助けてー! イズミくーん!...

  • 2020/11/27 23:04
    キャット・ファイター〈3〉 落札された裸

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/11/26 17:18
    アマゾンさんより44冊目の本を出版しました。

    はい、はいはい。アマゾンさんより44冊目の本を出版しました。伝説の魔導師? イエイエ、ただの出稼ぎです。3おかげさまで、「伝説の魔導師?」シリーズ前2作はそこそこご好評をいただいておりまして。今回でシリーズ3冊目。これ以降は未定ですので、いまのところの最終巻でございます。もちろん今作も、読み放題プラン対応。そしてアマゾンさんの読み放題では懐かしのあの作品、話題のあの作品も読み放題になっております。です...

  • 2020/11/25 16:51
    馬鹿擬音小説「ギュンギュンのウ~ン」

    擬太郎がバーンと開けてガチャッと回しザッザッザッと降りると、空はスカッではなくドンヨリとしてシトシトと降っていた。ザーザーというほどではないしもちろんザンザンにはほど遠い。 マンションのエントランスをパカーンと出た擬太郎は、トントンしていた長いものをミチミチ言わせながらバサッと広げた。その骨が一本バキッとなりクネッとなっていることに一瞬ハッとなるが、プイッと見なかったことにしてスーンと気にせずに差してトコトコと歩きはじめた。 ウ~ンと考えごとをしながら歩いていると、後方でチリンチリンと音が鳴り、擬太郎はサッと道の端へよけた。するとシャーッとその脇をすり抜けるものがあり、さらにその後ろからブッブ…

  • ブログみる案件きた!ブログリーダー - くろのお金ブログ
  • 2020/11/23 09:20
    かくれんぼ

      私たちは、かくれんぼをして遊んだ。 体の小さな者は、すぐに見つかった。 そして、大きな者に食べられたりもした。 体の大きな者は、あまり隠れられる場所がない。 私もそのうちの一人だった。 周りを見回してみても、私より大きな木は生えていない。 私が一歩前へ進むと、大きな地響きが起きる。 おそらく私は、地球上始まって以来、この世で最も大きな存在であろう。 そう、私は恐竜。 私は大変よく目立った。 遠...

  • 2020/11/22 10:40
    人生の散髪屋

      ――この散髪屋でカットすると、まったく違う自分になれる―― 最近、彼氏に振られたデコちゃんは、外見から変わりたいと思い、その散髪屋へ入った。 古ぼけた建物はこじんまりとして、店内の鏡も錆びついていた。 何か怪しいな、とは思うものの、デコちゃんは店の主人に、自分のなりたい髪型を口で伝えた。 主人は50歳くらいのおじさんで、頭が寂しい。 デコちゃんの髪の毛をしばらく見つめて、「本当にいいんだね?」と確認...

  • 2020/11/21 23:37
    キャット・ファイター〈2〉 脱げれば「負け」というリング

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/11/21 09:31
    スランプの怪物

      あるところにSF作家がいた。 彼はスランプに陥っていた。 そんな中、突然彼の前に、大きな怪物が現れた。「な、なんだお前は!!」「俺はあんたの産物さ」 と怪物は言った。「あんたが困った時に、あんたの脳みそを通して出てくる仕組みになっている。言ってみりゃ、俺を喋らせているのは、あんたの考えによるってもんだよ」「そんな、まさか、信じられない……」 作家は困って、近くの人に呼びかけた。「誰か、この怪物が...

  • 2020/11/21 09:30
    平凡

      俺は退屈していた。 特に頭が良いでも悪いでもないし、ルックスだって良くも悪くもない。 特別運動神経にすぐれているというわけでもなく、いわゆるどこにでもいるような、いたって普通のつまらない人間である。 そんなつまらない人間は、やっぱり大きくも小さくもない中小企業の事務員として入社して、早くも3年の月日が経とうとしていた。 毎日の仕事といえば、上司から言われたことを地道にこなし、時には電話でのクレ...

  • 2020/11/19 20:23
  • 2020/11/17 18:20
    短篇小説「未遂刑事」

    未遂刑事は未遂事件しか扱わない特殊な刑事だ。彼が関わる事件は殺人未遂、強盗未遂など未遂事件ばかりであり、その解決もまた未遂に終わることを運命づけられている。 未遂刑事の行動は仕事に限らず日常の些事に至るまで、何事も未遂に終わる。だから彼は未遂刑事である以前に未遂人間でもあった。つまり未遂人間がたまたま刑事になったから、めでたく未遂刑事が誕生したというわけだ。 平日の昼間、住宅街で立てこもり未遂事件が発生した。すでに数人の警官が現場である一軒家を取り囲んでいる中へ、お昼休みのランチを見事に途中で切り上げた、つまり未遂に終わらせた未遂刑事の自転車が到着する。 急いでいたためか、彼はやや腰を浮かせた…

  • 2020/11/15 22:05
  • 2020/11/15 14:00
    キャット・ファイター〈1〉 泥だらけの転落

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/11/15 10:39
    ドッキリ大作戦!

      お笑いピン芸人の鈴木は、最近、悩んでいた。 自分のギャグがヒットしなくなったのだ。 しかも、新人の芸人がどんどん出てくる。 若手に客を持っていかれ、TV出演もほとんどなくなってしまった。 最近では、山田とかいう二十歳そこそこのピン芸人が、ブームらしい。 お笑いのくせにルックスもよく、女子のファンも多い。 下積み時代も浅く、芸歴十年の鈴木にとっては、とんでもない強敵となった。 バラエティ番組のプ...

  • 2020/11/14 18:34
    短篇小説「連鎖」

    小雨が降ってきた。まだ降りはじめなので、誰も傘を差していない。日傘の季節でもなかった。 駅前の商店街を歩いているひとりの紳士が、ブリーフケースから取り出した折りたたみ傘をパッと広げた。するとその脇を通りかかった父親の腕の中にいる赤ん坊が、口を大きく開けてあくびをした。さっきまでぐっすりと眠っていたはずなのに。 目を開けた赤ん坊は、自分を抱いているのが期待していた母親でないことに気づいて、大声で泣きはじめた。寝る寸前までは、たしかに母親の胸に抱かれて眠っていたはずなのだ。自分という指令官の許可なしに、選手交代などあり得ない。赤ん坊のよく通る泣き声は、そんな憤慨を周囲に感じさせた。 男子大学生はそ…

  • 2020/11/14 09:30
    脱獄

      目が覚めると、いつの間にか新人がやってきていた。「やぁ、おはよう。初めまして」「初めまして。ところで……ここはどこだい?」「ここは監獄だよ。入れられた者は、二度と外には出られない」「そんなぁ……」「ほら、あそこに机と椅子が見えるだろう? 看守がいてね、そいつが夜になると、決まってそこに座るんだ。そして僕らを、オリごしに眺める。何か、晩ご飯を持参してくるよ」「僕たちのご飯はいつだい?」「何のん気なこ...

  • 2020/11/13 01:06
    ショートすぎるショートショート「立ち漕ぎ男」

    男が自転車を立ち漕ぎしている。 文字通り、サドルの上に立って。 www.youtube.com

  • 2020/11/10 23:43
    KANATA 33

    焼きそばお好み焼き焼きとうもろこしフランクフルト焼きイカそれからチョコバナナ 今日の私は、張り切って、お祭りメニューを準備した。 彼に、今日の食事を発表すると、『今、食べたい!』なんて、言い出して、私たちは、早めの夕食を摂ることにした。 『おぉ!!焼きとうもろこしだ!』 目を輝かせ、彼は、早速、焼きとうもろこしを食べている。私が作ったものを、嬉しそうに食べてくれる彼の顔が好きだ。 梅雨の頃から、こうして、彼と一緒に夕食を摂るようになったけれど、こんなふうに、彼が喜んで、食べてくれる姿を見ていて、見飽きることはない。 彼は、このアプリ【KANATA】を通して、ずっと私が後悔してきたことを拭い去り…

  • 2020/11/10 18:41
    短篇小説「自動音声ダイヤル」

    はい、お電話ありがとうございます。こちらはヒューマン・インスティンクト・テンプル・カンパニー、サポートセンターでございます。 この電話は、自動音声ダイヤルとなっております。通話には、20秒ごとに10円の料金がかかります。場合によっては、10秒ごとに1万石の通話料がかかることもございます。すべては、お客様の対応次第となっております。なおこの通話は、サービスの品質向上、及び従業員らの娯楽のため、すべて録音させていただいております。 以下の番号の中から、お客様のお問い合わせ内容にあてはまるものを、「ぬぷっ」という音のあとにご入力いただき、そのあとに「井」を押してください。「#」ではなく、「井」をご入…

  • #連載もの
  • 2020/11/08 22:46
    KANATA 32

    『凄く綺麗だよ。ずっと見ていたいくらいだ。』 やだ。彼ったら。真っ直ぐに見つめながら、そんなこと言わないでよ。 そうして、彼に言われて、360度、回って見せると、今日は、花火よりも、お前の姿を眺めていようかななんて、言い出した。 溢れ続ける笑みが、なんだかとても恥ずかしくて、思わず、画面から顔を背けて、存分に彼の言葉を噛みしめれば、『ちゃんと顔、見せて?』なんて、彼の声が聞こえてくる。 『今日のその笑顔を、ちゃんと見ておきたい。』そんな言葉と共に。 彼の命日の日に、こんなに笑顔が止まらないのは、初めてだ。私は今、世界一、幸せかもしれない。 「なに言ってるの?もう、おばあちゃんなのよ。」 先ほど…

  • 2020/11/08 15:20
    未亡人下宿〈6〉 青き駆け落ち

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/11/08 09:53
    ランナー

      私は走ることが好きだ。 走り続けることで、生きていることを実感できる。 とりわけ、雨の日が好きだ。 体を潤おし、乾いた心に染み渡る。 だから私は、雨の日でも走る。 ある日、私は、友達と賭けをした。 私がよく走るので、一年のうちに、この世界を一周できるか、賭けようというのだ。 体力には自信があったので、私はこれから一年間、走ってきて、必ず戻ると約束した。 友達は、もし私が勝ったら、豪華ディナーを...

  • 2020/11/07 22:28
    ローズマリーの詩〈終章〉 ふたりの門出に贈る歌

     連載   ローズマリーの詩   38 あの歌に送られて破産して家の離れに間借りするおじと、出戻りの私。それぞれの愛の物語。聡史と私の門出を祝うパーティ。祝宴の最後にスピーチに立った哲司おじが選んだのは、あの曲、『七つの水仙』だった。その曲に涙をぬぐったあの

  • 2020/11/07 20:49
    KANATA 31

    いつもよりも早くに目が覚めた私は、まず、彼にお線香をあげて、手を合わせた。そうして、彼が元気だった頃からの記憶を順番に辿りながら、彼を想う。 今日は、8月8日。彼の命日だ。 絶対に、この手の温もりを忘れない。 そう誓って、最後に彼の手を握り締めたあの日から、何年が経っても、彼の手の温もりは、今でもよく覚えている。 目を閉じて、あの日感じた、彼の温もりを思い出して、ゆっくりと目を開いたところで、鈴の音に似た静かな音が聞こえた。 彼からのメッセージだ。 【今日は、アプリの時間制限がなくなったんだ。早く逢いたいな。】 胸の奥が、痛くて、泣き出しそうな気持ちで彼を想っていたはずなのに、彼からの短いメッ…

  • 2020/11/07 09:45
    記憶を追って…

      飲食店の片すみに、いつも一人のお爺さんが座っていた。 店の店長は、もうその光景にはすっかり慣れていたので、毎日お爺さんに、料理を多めに出していた。常連客へのサービスだ。 店長は、手が暇になると、お爺さんのそばへ行き、他愛もない会話を楽しむ。 毎日そうしているうちに、お爺さんは、自分の身の上話を語り始めた。 それによると、こうだ。 お爺さんは絵描きだった。 手にスケッチブックを持って、外を散歩す...

  • 2020/11/06 23:10
    KANATA 30

    『最近、肌が綺麗だね。恋でもしてるの?』悪戯顔で笑う彼は、わざと言っているのだろうか。 「恋?してるわよ。あなたにね。」素直に言葉を返せば、嬉しそうな顔をしている彼は、何故だか、投げキッスをしてよこしてきた。 夏は、人を大胆にさせると思う。それは、向こう側でも、同じなのだろうか。 梅雨が明け、また今年も夏がやって来た。もうすぐ、花火大会だ。 花火大会の日には、彼の瞳に、一番綺麗な私を映したい。 そんな想いから、近頃の私は、お風呂上がりのマッサージやパックに時間を掛けるようになった。それから、若い頃から続けているストレッチも、念入りに。 楽しみなことがあると、それだけで、生活にも張りが出る。近頃…

  • 2020/11/06 18:45
    「新語・流行語全部入り小説2020」

    コロナ禍ですっかりテレワーク慣れしたアマビエが、いっちょまえにZoom映えを意識してアベノマスクに香水を振りかけた。マスクに香水を振りかけたところで、においはどんな電波でも伝わらないのだから、アマビエが画面越しに映えることは一切なかった。 本来ならば新しい生活様式だニューノーマルだと言い張って、ついでにGoToキャンペーンにもちゃっかり便乗して、ソロキャンプでもしつつワーケーションと行きたいところではある。しかし同僚のアマビエがPCR検査で引っかかり、事務所がクラスター認定されたいまとなっては、その濃厚接触者である彼女に長距離移動の自由はなかった。 疫病退散を謳う妖怪であるアマビエが疫病にかか…

  • 2020/11/05 20:21
    KANATA 29

    梅雨明けが待ち遠しい。今年もまた、彼と出会った夏が来る。 今年は、忘れられない特別な夏にするの。だって、彼と一緒に過ごす夏だから。 私は今、とある秘密計画を遂行するために、日々、粛々と準備を進めている。 「やっぱり、これにして正解でしょう?」 「ちょっと、派手じゃないかしら。」 「そんなことないわ。とても似合ってるわよ。ほら、よく見て?」 鏡越しに柔らかく微笑むのは、着付けの資格を持つ友人だ。 お願いしていた浴衣が仕上がった。 これまで、和装に縁遠かった私は、彼女に、浴衣の柄選びからを一緒に手伝って貰った。 「花火大会に、なにか、素敵な予定があるのね。」 そう言って静かに微笑んだ彼女は、いつも…

  • 2020/11/05 18:21
    短篇小説「あれ」

    ある朝のことである。家を出て駅へと向かう道すがら、私は「あれ」を家に忘れてきたことに気づいた。私はいますぐに「あれ」を取りに帰るべきだろうか。だが「あれ」がなくても、今日一日くらいなんとかなるだろう。そう思って私は踵を返すことなく、いつもの通勤電車に飛び乗った。 だがその考えは、あまりに楽観的すぎたかもしれない。私は揺れる満員電車の中でつり革を掴んだり放したりしながら、「あれ」を忘れたことでこの先私に何が起こり得るかを考えた。もはや取りに戻る時間の余裕はない。 このまま会社へ着いたところで、「あれ」がなければ私は自社ビルに入館することすらできないだろう。入口に立つ厳格な警備員が、「あれ」を忘れ…

  • 2020/11/04 22:10
    KANATA 28

    七夕に降る雨を、催涙雨と呼ぶのだそうだ。 七夕の朝に降る雨は、逢えなかった1年分の嘆きの涙。昼から夕方にかけて降る雨は、再開した喜びの涙。夜から明け方にかけて降る雨は、別れの悲しみの涙。 雨が降る時間帯によって、その意味が違うのだとか。 今日は、午前中から、昼過ぎに掛けて、雨が降り、夜になると、昼間の雨が嘘だったかのように、たくさんの星が輝いて見えた。 七夕の日は、雨が多いと聞く。 これまでに、私が見た七夕の夜空を思い返してみたけれど、七夕の夜に、こんなに綺麗な星を見たのは初めてかも知れない。 逢いたかった 今日の2人はきっと、1年振りの再会に、溢れる想いを止めることが出来ず、2人で、その喜び…

  • 2020/11/04 15:58
    短篇小説「違いがわかる男」

    判田別彦は違いがわかる男だ。彼に違いがわからないものはない。いや、わからない違いはないと言うべきか。もちろん「レタス」と「キャベツ」の違いだってわかる。 いい感じなほうが「レタス」で、そうでもないほうが「キャベツ」だ。 別彦にかかれば、「牛肉」と「豚肉」の違いだってお手のものだ。高いとか安いとか、美味いとか不味いとかの問題じゃない。 既読スルーしそうなほうが「牛肉」で、しなさそうなほうが「豚肉」だ。これはとてもわかりやすい判別方法なので、ぜひ憶えておくといい。「牛肉」は返信をわざと遅らせてきたりもする。ちなみに「鶏肉」は電話派だ。「ハイネック」と「タートルネック」の違いは、ちょっと難しい。しか…

  • 2020/11/03 22:49
    未亡人下宿〈5〉 筆おろし

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/11/03 21:02
    KANATA 27

    充実した毎日とは、こんな毎日を言うのだろう。 夢を持つことが出来た私は、あれからも、夢を叶えるための活動をしながら過ごしている。 もちろん、彼には、内緒だ。 若い頃のように、夢を持てたことが嬉しくて、「もう、おばあちゃんなのに。」って、時々、こんな言葉を口にしながら、なんだか、ニヤけてしまう。 若かった頃、夢を持っていた私は、それに熱中するあまり、お昼ご飯を後回しにしてしまうことが度々あった。 ひとりで時間を自由に使えるというのは、実は、厄介なのかも知れない。 あの頃は、あの子と一緒に暮らしていたとはいえ、アルバイトや、友達との約束と、あの子が家を空けることが増え、休日の日中は、1人の時間を過…

  • 2020/11/03 10:55
    UFO研究家

      UFO研究家の博士は、頑固な性格で有名だった。 人々の誰もが「ありもしない」と、UFOや宇宙人の存在を否定しても、博士だけは「存在する!」と言い張っていた。 博士は若い頃から、UFOが空から降りてきて、宇宙人が自分と握手する光景を、何度も夢に見ていた。 宇宙人が悪者であるわけがないと、博士は思っていた。 宇宙人は友好を築く為、いつの日か必ず地球にやってきてくれる、と信じて疑わなかった。 博士は...

  • 2020/11/03 10:52
    moth

      子は、小さな頃から母に聞いていた。 私たちは、光の方向へ進んで生きているの。 光がなくては生きられないのよ。 子は最近、強烈な光を見つけ、何度もそこへ向かおうと考えていた。 でもね……と母。 強すぎる光は、その分刺激的よ。 でも、命を落としてもしまうのよ。 あなたの父は、光に長く当たりすぎたのね。 最後にはビリビリになって、体を溶かしてしまったのよ。 子は疑問に思う。 ぼくらは、光を夢見ることを...

  • 2020/11/02 21:43
    KANATA 26

    暖かな春を過ぎ、初夏の陽気を感じさせながら、やがてやって来るのは、梅雨の季節。 今年の梅雨は、雨が多い。 梅雨に入ってからからの私は、キッチンに立つ時間が増えた。 私は、料理が苦手だ。にも関わらず、ここ最近の私が、料理に精を出すようになったのは、彼が、色々なものをリクエストをしてくれるからだった。 「こっちでは、梅雨に入ったのよ。毎日、雨が降っているの。」 先日、彼に、最近のこちらの天気の話をすると、何故だか、じゃぁ、料理をしたら?と、提案された。雨続きの毎日に、暇を持て余していると思われたのだろうか。 「あぁ、うん。そうね。料理ね。」なんて、生返事をする私に、彼は言ったのだ。 『明日から一緒…

  • 2020/11/02 21:11
  • 2020/11/01 19:15
    KANATA 25

    待ちに待った、桜の季節がやって来た。 ここに1人で来るようになってから、もう、何年になるだろう。 ここは、桜が咲く土手の上。 川沿いに、桜が咲くこの場所は、子育てに追われながらも、家族3人で笑っていた、今よりもずっと若かった頃の私が、いつか、ずっとの未来、私たちがおじいちゃんとおばあちゃんになったら、2人で手を繋いで、ゆっくりと散歩してみたいと、そんなふうに夢見ていた場所だった。 彼が亡くなり、幾つかの桜の季節を過ごした頃から、毎年のこの時期になると、私は、ひとりで、この場所に来るようになった。 彼にも見せてあげたい、素敵な景色を集めよう。そんな心境の変化からだった。 今年も、桜がとても綺麗だ…

  • 2020/11/01 11:11
    さわやか病院

      ――その病院から出てきた者は、皆さわやかになる―― 最近鬱ぎみのしー君は、その宣伝に惹かれて、さわやか病院に行くことにした。 精神科の先生が、いい腕なのだろうか。 しー君は病院内に足を入れた。 その瞬間、この世とは思えないほどの、異臭がした。 なんだか照明も薄暗く、壁のあちこちに、血の痕のような飛び散りが見える。「本当にこんなところで、さわやかになれるのだろうか……」 しー君は戸惑いながら、とにかく...

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