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オリジナル小説発表

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ジャンル不問、オリジナル小説の発表場所です。オリジナル小説の記事を書いた時はぜひ、TBお願いします。 -------------- ご参加ありがとうございます! 当テーマに送信していただける記事の基準はこちらです。 【受付できる記事】 ○小説記事  ○小説の更新お知らせ記事、目次・解説記事 △性描写のある小説 → 目立つ所に性描写があることの断り書き、対象年齢表示あればOK 【お断りする記事】 ×小説以外(日記、評論など)がメインの記事 ×性描写があるのに何の断り書きもない小説 ×犯罪奨励、詐欺アダルト宗教、そのほか不法行為や勧誘に関わるブログの記事 ×二次小説 (二次小説とは…他人の創作物を使った小説のこと。古典のリメイクも不可)※オリジナルの歴史時代物は歓迎します うるさくてすいません。どうかご協力お願いします。 わからないことあれば管理人ブログ「ガイドライン」へ。
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34,755件
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894人

オリジナル小説発表の記事

2020年12月 (1件〜50件)

  • #赤川次郎
  • #ライトノベル
  • 2020/12/31 23:47
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第47話

    「……ちっ!」隙を見つけ斬りつけたが、かわされた。一息つけて、一度間合いを空けた。「思ったよりやるっちゃ……」なかなか決め所が見つからず、お互い呼吸が荒くなった。しかし、なにかしら見つけないと、持久戦になってしまう。そうなると、残りの体力がどちらにあるか、駆け引きでもある。できれば、それは避けたい。ここまで逃げ回るのに、体力を使っている。向こうはそれまでにどれだけ使っているか……。計算が出来ない。呼吸を整えると、右足を蹴り出す。クイファも合わせて動く。相変わらず、力が拮抗している。更に力を込めるが、状況は変わらない。手段を変えて、斬りかかる。しかし、また避けられてしまう。体勢を崩したところへ、カウンターを狙って踏み込んできた。『間に合うか……』必死に体を戻し、愛剣で受け止めるとギリギリ回避した。「危なかった……...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第47話

  • 2020/12/31 16:59
    短篇小説「坂道の果て」

    大学受験当日の朝、満員電車から予定通りスムーズに脱出した嶋次郎は、受験会場である志望校へと続く坂道を歩いていた。右へ左へうねりながら延々と続くその登り坂は、まるでこの一年間の道のりのようだなと思いながら。 だが嶋次郎がこの道を辿るのは初めてではない。それは彼が浪人しているという意味ではなく、彼は何度もこの道を実際に通ったことがあるということだ。 嶋次郎は予行演習と称して、受験前に何度も志望校への道をその足で確認していた。もちろん当日と同じ時間帯の同じ電車に乗り、同じ道のりを歩いて。それが勉強をサボるちょうどいい理由になっていたことも否めないが、そこは「息抜き」と心の中で都合よく言い換えてみたり…

  • 2020/12/31 11:29
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第46話

    中心街は戦いづらくリスクがある。移動するしかないか。「逃がすか!」ムギはすんなり場所移動に応じてくれたが、こいつは聞く気が無い。ここで決着を付ける算段なんだろう。商店街を抜けて、街の外へ出ることを試みてみた。細く曲がりくねった道を駆け抜けた。すると、あいつが向かってきた。切り返し、受け止める。そして、受け流した。あいつは倒れ込むと、その隙に転がっていた籠を被せた。相手が視界を失っているうちに、遠ざかった。「待てーい!」こいつ、早いぞ……。見失わない程度に離したが、籠を投げ捨てて間隔を詰めてきた。「仕方がないな……」この辺りなら街中から外れてきて、近くに広い公園があるからちょうど良い。愛剣を引き抜き、振り返り構えた。やつの剣を受け止めると、引き下がるふりをして、公園の方へ誘導した。「やっと、戦う気になったか」「オ...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第46話

  • 2020/12/31 10:08
    アパルトマンで見る夢は 1 椅子

      白髪頭の監督は、お辞儀をするように下を向き、その顔を両手で隠した。 体が前へ傾いたことで、彼の座っていたパイプ椅子が、キィ……と小さな音を立てた。 静まり返った広い部屋に、その音だけが通って聞こえた。 数秒後に、ピタピタ、と、裸足の足音が近寄ってきた。 自分のすぐ正面で止まるのを、監督は闇の中で感じ取った。 両手をそっと顔から下ろして、目を開くと、白くて細い足が二本、きれいに揃っているのが見えた...

  • 2020/12/31 10:05
    稲妻トリップ 1 さっき……

      高架下の水面(みなも)に、街灯の明かりが落ちて揺れていた。 淡いオレンジ色の光と、薄暗い夜の青さが入り混じる。 俯いた顔に冷たい風が吹きつける。 ほんのりと、潮の香りを運んでくる。 車のライトが背中で輝き、速いスピードで過ぎ去った。 毎日見ている。 足を止めて、橋の上から。 そこは、道路を仕切る白線の中。 深夜になると、交通も少ない。 誰にも入ってきてほしくないの。 ただ一人で、私は海を眺める...

  • 2020/12/31 00:00
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第45話

    ミタチアとの戦いを終えて、北上してきた。しかし、対戦相手と巡り会えず、海まで来てしまった。更に北上して、対岸の島へ行く選択肢もあった。ただ、無駄に歩くような気がして、引き返すことにした。来た道とは別ルートを辿ることにした。それでも見つからなかった。いかに、この選考会の厳しさを実感していた。気付けば、地元付近まで来てしまったので、立ち寄ることにした。昼過ぎ、森林の深い山奥を歩き、辺りを警戒していた。ここに戻ってきてからは、なにか嫌な予感がしていたからだ。せっかく、戻ってきたんだ。心身共に疲弊したこの体を休めるために、足早にある場所へ向かった。「ああ……生き返る……」山奥の自作湯船に入り、束の間の休息を得ていた。タトリーニのこともあり、この周辺と湯船自体に罠を仕掛けた。周辺に細い紐を通し、触れると音が鳴る仕組み。湯...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第45話

  • 2020/12/30 13:22
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第44話

    「あいつ、しつこいぞ!」またもや煙幕に包まれて、嫌気が差してきた。煙幕の中から殺気を感じ、振り抜いた。感触が良かったが、なにか違う。「ちっ。竹か!」深い煙に包まれてしまっては、相手を確認できない。それは相手も同じことだが。どのみち、この中で戦うには勝機が見えない。むやみに動くだけだと、体力を無駄に使うだけだ。まずは、この煙幕から抜け出そうとするが、竹が邪魔をして思うように抜けられない。「くそっ!」追い打ちをかけようと、ミタチアが襲いかかってきた。応戦するも、勢いに負けて押し込まれてしまう。押し負けてしまい煙幕の外に出たが、尚も攻撃が続いた。これをチャンスと捉え、反撃に出る。状況が逆転され、ミタチアは間合いを空けた。「随分と息が上がっているな」そう言ってみるが、オレも息が上がり呼吸を整える。「敵を取るまでだ!」し...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第44話

  • 2020/12/30 10:32
    ソレイユの森 1 シュー教授

      大学の研究室で教授を務めていたしゅういちは、漢字で「周一」と書く。 同僚や教え子たちは、親しみを込めて「いち」を伸ばす発音にし、「シュー教授」と呼ぶことにしていた。 歳は四十過ぎ。毛量は多いけれど、白髪を染めないので老けて見える。 しかし性格は明るく、人当たりも優しかった。 生徒の勉強を、その子が解かるまで親身になって指導していた。 親身になり過ぎたのかもしれない……。 あとになって、シュー教授...

  • 2020/12/29 23:55
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第43話

    しかし、いきなり敵討ちって……。いったい、なんなんだ。「お前が来るのを待っていた!」上半身ほどの大きさの大剣を構え、こちらを睨み付ける。「敵討ちって……誰のだよ。そもそも、お前は誰のだよ!」「名前くらいは、教えてやろう。ミタチア・オイトだ」知らないな……。『兄貴』の敵となると、キョウコはまず違う。冗談で復讐に来たくらいだし。年齢的にオレとさほど変わらないところを見ると、若造のムギでもなさそう。じいさんは、昔から弟子を作ることを何故か嫌っていた。『twenty』にいたときでさえ、部下を付けなかった。あれほどの腕があったので、弟子入りを懇願するやつは多かったが、一方では倒して名を上げようとするやつも同じように存在した。ミタチアが何かを投げつけた。「また煙幕か……!」再び、黒い煙の中に包まれてしまった。そして、闇に包...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第43話

  • 2020/12/29 18:00
    いかにも昭和のおっさんが言いそうなセリフ「安倍さんの会に連れて行ってやる」 特権化した夕食会

    「安部さんの会に『連れて行ってやる』」なんともまぁ、いかにも昭和のおっさんがいいそうなセリフで、気の抜けた笑いしか出ない。新型コロナウィルスの感染拡大が止まらず、経済対策に自殺防止対策、下げ止まらない少子化対策などなど、国とそれを先頭でひっぱる政治家たちが議論すべきことなら山ほどある、今。国会で、前首相にしてコロナ対策の真っただ中で敵前逃亡をした現役政治家が1時間もかけて釈明した結果が、これ?「安...

  • ブログみる案件きた!ブログリーダー - くろのお金ブログ
  • 2020/12/29 17:52
    短篇小説「土下男」

    土下男はすぐに土下座ばかりするから土下男と呼ばれている。名前はまだない。なんてことはないが誰も彼を本名で呼んだりはしない。彼が死んだら、間違いなくその戒名には土下男の三文字が含まれるだろう。だが土の下に埋められるにはまだ早いと言っておく。 土下男は学生時代から土下座ばかりしていた。宿題を忘れても遅刻をしても買い食いをしても土下座一発で許された。 しかし人はどんな奇抜な動きにも見慣れるものだ。飽きられるにつれて、その効力は着実に弱まっていくことになっている。ならばこちらも強度を上げねばならない。そのためにはどうしたら良いか。土下男はまず、地面に頭をつけている時間を増やすことを考えた。 不祥事を起…

  • 2020/12/29 10:34
    月のライン 1-1

      フェリーに乗って30分、本土から16キロと、さほど離れていないその島は、観光地として人気があった。 島、といっても南の楽園ではなくて、船が上陸する港には、たしょう砂浜がある程度で、島を支える地面には、そのほとんどに硬い石畳が敷き詰められていた。 上に建つのは、中世の面影を残した建物。 太い木枠が入り交じり、みな同じような朱色の屋根に、白い壁。 花を飾った出窓に揺れる、レースのカーテン。 ドアには飾...

  • 2020/12/29 00:11
    【小説】「パスク、あの場所で待っている」第42話

    「あのばばあ。せっかく書いた書類、いちいちケチつけるんだもん」結局、コトミの愚痴を聞かされる羽目になった。タトリーニとの対戦翌日、荷物をまとめると、対戦相手を求めて東の方へ旅に出た。交代があるので四六時中ではないが、時折現れてはコトミの上司の愚痴を打ちまけていた。「永遠に話し続けて、説教が終わらないだもん。嫌になってくる……」その愚痴を、永久に聞かされるオレの方が嫌になってくる。「そして、お腹がすいた……」「もう、奢らないからな!」コトミには、もう貸しはないはず。「別にいいもん。交代になったら一人で探すもん」不満そうに頬を膨らませていた。「おいしい甘味があっても、パスクさんには教えてあげない!」「教えてくれなくて、構わないけどな」コトミほど、甘いものには興味がない。日もまだ真上にある時間帯。林を抜けると、急に開...【小説】「パスク、あの場所で待っている」第42話

  • 2020/12/28 11:05
    回る円盤

      その時、少年はまだ言葉も知らぬ赤ちゃんだった。 母と、ベビーカーに乗せられて、連れ出された散歩の途中で、少年はあるものに目が釘付けとなった。 ベビーカーから見上げたその先に、くるくると回る円盤があった。 なぜ円盤があるのか、なぜくるくると回っているのか、しかし少年は0歳だったので、母親に尋ねようとしても、ただ「あー!」としか言えないのであった。 円盤は回る。 ただくるくると、その場で回り続ける...

  • 2020/12/27 23:55
    キャット・ファイター〈8〉 暴かれたわいせつショー

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/12/27 09:47
    わたる君の日記帳

      ある日の放課後、わたる君は横断歩道の向こうから、一人のおじさんが歩いてきて、話しかけられた。「やぁ、やっと会えたな」「おじさんだれ?」 わたる君はおじさんの顔を見た。 どこか自分と似たような目をしている。「親戚の人?」「とりあえず止まって話さないか?」「えっ、横断歩道だよ。信号が赤に変わっちゃうよ」 わたる君が足を進めようとするが、おじさんはわたる君の腕を、がっしり掴んで放さなかった。「助けて...

  • 2020/12/26 15:40
    短編小説「言わずもが名」

    かつてはこの国にも省略の美学というものがあった。 たとえば俳句。に限らず会話や文章、そして商品のネーミングに至るまで、語られていない行間にこそ価値がある。そこに粋を感じる悠長な時代がたしかにあったのだ。いやあったらしい。私はそんな時代は知らない。物心ついたときからすでに、省略は不誠実と見なされ罰せられる、何もかもが説明過多な時代がすっかり完成していたのだから。 もちろん説明過多というのは過去と比較しての話だ。この時代に生きる私たちはそれを説明過多と感じることはない。なぜならば目にするものも会話も文章も、すべてが常時説明過多であるからだ。 つまりそれはデフォルトであり標準仕様であって多いも少ない…

  • 2020/12/26 10:48
    不思議な絵

      美術部のあいちゃんは、ある日先生から、有名な画家の絵を見せられた。「この人はきみたちと同い年の青年だ。なのに、こんなにリアルな絵を描いている。参考にしなさい」 その画家の名前は、こうくんといった。 特に、人物画がうまかった。 今、個展を開いていて、世界中を回っているらしい。 もうすぐ日本にも来日する予定だった。 あいちゃんも会いに行こうと決めた。 ある日、TVの取材で、こうくんの新作が発表され...

  • 2020/12/25 21:35
    好きな人に囲まれて両手に華 (28) 

     クリスの嬉しそうな声がする。  『ふふふっ、今日は特別にカナダから出れるぅ』  『え、そうなの?』   すると、クリスはとんでもない事を言ってきた。  『マサ。君の護衛として、我が国の国境隊が1個大隊護衛する』  『はあっ?』  『で、私も一緒にニューヨークへ行く』  すると、二人の疲れた声が聞こえてきた。  『もう、ほんとに大変だったんだから』と、デイブだ。  『クリスはね、本当にサド王様だよ...

  • 2020/12/24 15:44
    短編小説「誰得師匠」

    今日も劇場の楽屋は誰得師匠のおかげでてんやわんやである。楽屋口から出たり入ったりしながら、トイレへ行った一瞬の隙に連れてきた鳩がいなくなったと誰得師匠が騒いでいる。担当の新人マネージャーを呼びつけては鳩の生態を語って聴かせ、劇場の女性スタッフを捕まえては鳩の餌代がいかに高くつくかを熱弁する。 三十分ほどスタッフ総出で探索させたのち、楽屋でのんびり煙草を吹かしている誰得師匠にマネージャーがおそるおそる声をかける。「すいません、まだ見つかってなくて……」 新人が怒鳴られるのを覚悟してほとんど目をつぶりながらそう言うと、誰得師匠は驚くべき返答をしれっと口にした。「ああ、鳩ならここにあったよ」 そして…

  • 2020/12/24 00:21
  • 2020/12/23 15:08
    短編小説「漕ぎ男」

    男が自転車を立ち漕ぎしている。 文字通り、サドルの上に立って。ペダルまでの距離は遠いが、いまは下り坂なので問題はない。上り坂が来ないことを祈るばかりだ。 やがてサドルの上に立って進む立ち漕ぎ男の脇を、座り漕ぎ男が追い抜いてゆく。座り漕ぎ男もまた文字通り、地面に座ったまま自転車を漕いでいる。もちろん尻は熱い。 と思いきや、ボトムスの尻部分には二個のローラーがついているので熱くない。なので正確に言えば二輪車ではなく四輪車と言うべきだ。尻ローラーがうなりを上げる。 そうなると次に現れるのはもちろん寝漕ぎ男だ。寝漕ぎ男は前輪と後輪のあいだに、あお向けに寝そべってペダルを漕いでいる。なので寝漕ぎ用自転車…

  • 2020/12/23 00:15
    片づけられない女②

    週に一回のカウンセリング開始からひと月半ほどたったころ、またゆり子の睡眠障害の話がでた。夜寝られないので主治医から睡眠剤を処方されているが、出来るだけ依存しないようにしているとこれまでも何度か話していた。 「寝られない原因は仕事のストレス以外に何かありますか。例えば夜カフェインを取るとか。お酒をたくさん飲みすぎるとか」 もう一度こう聞くあかりに、 「私、片づけられない女なんです」 と、意表を突く答えがゆり子の口から飛び出した。 「掃除する元気もないから、家の中がグチャグチャだし。テーブルの上には郵便がうず高くたまっていて...そこでご飯を食べることさえできません。中には重要な書類もあるはずだけど、どうしても手が付けられない。それが気

  • 2020/12/22 18:48
    短編小説「ジダハラ」

    世間では時短ハラスメント、略して「ジタハラ」というものが流行っているようだが、わたしの職場では「ジダハラ」にすっかり迷惑している。 ジダハラの原因は、わたしと同じ職場で働く壇田踏彦という男である。踏彦はことあるごとに地団駄を踏む。その足音が、周囲をジリジリと苛つかせるのである。すでにおわかりだとは思うが、ジダハラとは「地団駄ハラスメント」の略である。 厄介なのは、われわれ地団駄を踏み慣れていない人間にとって、いまだ地団駄という行為が未知の領域であるということだ。地団駄とは本来、怒りや悔しさから踏むものと思われている。だが踏彦の様子を観察した結果、わたしを含む周囲の同僚らの見解では、それは地団駄…

  • 2020/12/21 22:50
    キャットファイター〈7〉 異性格闘のたくらみ

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • #サイコ
  • 2020/12/21 20:40
    好きな人に囲まれて両手に華 (26) 

     これはやばい。 今の内に、まだ理性が保っている間に行動しないと。 そう思った嘉男はベッドから降りながら声を掛けてくる。  「朝飯は簡単なのでも良いか?」  「は、はい、良いです」  え、作ってくれるのか、この人が?  ぎゅるるるるる……。 またもや聞こえる、盛大な音が。 その音が聞こえたのだろう、今度はさっきよりも盛大な笑い声が聞こえてくる。   「わはははっ……。はいはい、そう急かすな。すぐ作って...

  • 2020/12/20 11:06
    輪廻転生

      いつも同じ夢を見る。 女の子が話しかける。「あなたの寿命の一年を、私にくれると約束したら、好きなものをあなたにあげるわ」「あげるさ」 と、その男は言う。 どうせ夢の中の話だ。 現実には関係のないこと……。 翌日、男は好きなものを手に入れる。 そしてまた夢を見る。「今度は何くれる?」 男は女の子に、寿命を一年分ずつ渡しながら、欲しいものを手にする。 そのうち、夢の中の女の子が成長し、大きくなる。「...

  • 2020/12/20 00:05
  • 2020/12/19 14:39
    短編小説「キュウリを汚さないで」

    工場の真ん中にテーブルがある。テーブルの端で男Aがキュウリに泥を塗っている。 その隣の男Bがたっぷり泥のついたキュウリを受け取ると、シンクへと走りそれを丁寧に洗う。男Bはそのキュウリを、シンク脇に引っかけてある泥まみれの布巾で拭く。キュウリは再びドロドロになるが、このドロドロは男Aがもたらしたドロドロとは何かが違う。何が違うのかは誰にもわからない。 ドロドロのキュウリを預かりに男Cがやってくる。男Cは男Aのいたテーブルに向かい、そこでやはりたっぷり泥を塗ってから、ドライヤーでカラカラに乾かしてゆく。最初は熱風、仕上げは冷風。乾ききった泥キュウリは、すっかり違う表情を見せる。 そこへ下駄を鳴らし…

  • 2020/12/19 08:56
    シャツ

      シャツは、「自分はどうしてこんな人に着られているんだろう」と、納得がいきませんでした。 シャツは、ショーウィンドーのマネキンに着られているのが、一番でした。 華やいだ人通りから、たくさんの視線を集めていたのですから。 今、シャツは試着室にいます。 おばさんに着られて、鏡と向き合わされているのです。 ちょっと太いおばさんは、シャツのボタンを引きちぎりそうです。 シャツは、ショーウィンドーに早く帰...

  • 2020/12/18 15:55
    短編小説「タテ割り刑事」

    張り込み刑事が今日も現場に張り込んでいる。 張り込み刑事は文字どおりの張り込み刑事であるから、張り込む以外の仕事は何もしないし教わってもいない。手錠の掛けかたすら知らないし、そもそもそんなもの所持してもいない。銃なんてもってのほかだ。それぞれ手錠刑事と発砲刑事に任せれば良い。 張り込み刑事は小腹が空いてきたので、差し入れ刑事に差し入れをお願いすることにした。差し入れ刑事はアンパン刑事からアンパンを、牛乳刑事から牛乳を独自ルートで入手し、電柱の陰から向かいのビルを見つめている張り込み刑事に渡す。 張り込み刑事はそれをいったん後輩の毒味刑事に食べさせ、念入りに無事を確認してから口にする。アンパンや…

  • 2020/12/16 13:06
    短編小説「課金村」

    この村ではなにもかもが無料である。一見そのように見える。本当にそうなのかもしれない。本当はそうなのかもしれない。ということは、そうじゃないのかもしれない。 朝から公園を散歩していた私は、喉が渇いてきたので自販機でジュースを購入しようと考える。ここでつい「購入」などと言ってしまうのは、前時代的な貨幣経済に毒された旧人類たる私の悪い癖だ。 ここではなにもかもが当たり前のように無料であり、自販機に並んだ十数個のボタンは、いずれも最初からここ押せワンワンとばかりにまばゆい光を放っている。そもそもコインの投入口など、どこにもありはしない。 早くも疲れを感じていた私は、選び放題の中から栄養ドリンクのボタン…

  • 2020/12/15 23:31
    キャット・ファイター〈6〉 破廉恥はエスカレートする

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/12/15 18:15
    ショートショート「バスが来るまでの間」

      バスが来るまでの間、君の他愛無い話に耳を澄ませた。騒音を擬人化したタケルも、すぐ卑屈さに空気を変えるマサヤも今日は居ない。君を独り占め出来る嬉しさを思えば…

  • 2020/12/13 09:56
    3人の宇宙人

      高度な文明の発達した星から、3人の宇宙人が地球に来た。 地球人は友好をはかるため、手厚くもてなすことにした。 まず、長旅で疲れていると思ったので、マッサージを受けさせた。 すると宇宙人はこう言った。「なんてことだ、凶暴な地球人め。こんなに体をつねられて、憤慨だ!」 今まで高度な星にいて、重力も軽いせいか、体が凝ることもなかったのだ。 次に、仕方がないのでお灸士に来てもらい、お灸で和んでもらおう...

  • 2020/12/12 18:55
    短編小説「失礼くん」

    「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく知らない家に上がりこんでゆく。もしもあなたが彼に失礼されたくないのなら、この時点で「失礼しないでください!」と即座に返答しなければならない。さもなくば、失礼くんはこのひとことが受け入れられたことによって、以後すべての失礼を許されたと解釈し、失礼の限りを尽くすことになる。この日も特に返事は聞こえなかった。 失礼くんは失礼な人なので、もちろんインターホンなど鳴らさないしノックなどするはずもない。とはいえ玄関の鍵さえ閉めておけば勝手に上がりこまれる心配もない……と言いたいところだが、失礼くんが上がりこむ家は、決まって玄関の鍵を掛ける習慣のない家と相場が決…

  • 2020/12/12 09:56
    なぞの声

      新人の宇宙警察官は、一台の宇宙船に乗って、宇宙をパトロール中だった。 彼はまだ新人なので、早く手柄を取りたいと常々思っていた。 近々昇級試験があると聞いていたが、いつのことになるか、まだ未定だった。 だから日頃から手を抜かずに、訓練しておかなければならない。 今日も自ら宇宙船に乗り込んで、危険な異物などないか、パトロールに精を出していたのだ。 宇宙には、地球から出たさまざまなゴミが漂っている。...

  • 2020/12/11 21:13
    好きな人に囲まれて両手に華 (22) 

     週が変わった翌週の火曜日の午後。 俺はスーツを着て履歴書を持参して、あるスポーツジムに入っていく。  人事担当と面接をして入社試験なるものも受けて、その場で即決された。 4月からの正社員としての雇用となった。 3月末までには住む所を決めて、4月には教えるようにと言われた。  夕方近くになり、スポーツジムの所長は人事担当者から報告を受けた。  「中高大では水泳バカと名が付くほどの有名人で、自分も知...

  • 2020/12/11 18:10
    短編小説「賃走少年」

    拓朗は少年で、少年は拓朗だった。テレビのニュースを観て犯罪に憧れた拓朗少年は、家の前でアイドリング中の見知らぬ車の助手席に乗り込むと、運転手にナイフを突きつけて言った。「おい、東京駅まで行け! 言う通りにしろ!」 不意の乗客に運転手は、思いのほか慣れた口調で言った。「あ、もちろん言う通りにしますよ。これ、見ての通りタクシーですから」 拓朗が影響を受けたニュースとは、バスジャック事件であった。本来は別の目的地に向かっているはずのものを、自分の思い通りの場所に向かわせる。こんなに格好いいことがあるだろうか。拓朗はそう思って、決死の行動に踏み切ったのだった。ところが運転手は、すんなり言う通りに連れて…

  • 2020/12/09 21:49
    キャット・ファイター〈5〉 接待ドールだった日々

    「愛」の「不純さ」を知ってこそ、「愛」の「純粋さ」に思い至ることができる。人間関係に関する著作を手がけるエッセイスト・長住哲雄が、「愛って何?」を、科学的、文学的、ときどき叙情的(?)に解き明かす恋愛論ブログです。

  • 2020/12/09 17:59
    短編小説「ハズキルーペがハズかない」

    「今日も私は精一杯、力の限りハズけていたのだろうか? あるいは楽をして、中途半端に七割方ハズいたあたりで、満足してしまっていやしないだろうか?」 近ごろ私は、仕事を終えた帰りの電車内で、毎日そう考えている。それはもちろん、私が最近ハズキルーペを購入したからである。 しかしハズキルーペを所持しているからといって、何事をもハズけるとは限らない。無論ハズける確率はいくらか上がるのだが、やはり努力なしに何かをハズくことなどできやしない。 そもそもハズくということが、果たして良いことなのかどうか。そのレベルから考えぬ限り、ハズくという行為は命取りにすらなるのである。 私の中に「ハズく」という感覚が芽生え…

  • 2020/12/08 15:14
    短編小説「某校の卒業式」

    今日は晴れて我が校の卒業式であった。それはこのたび、晴れて卒業を迎えた私にとって忘れられぬ卒業式となった。忘れるほうが難しい、といったほうが正確かもしれない。 我が校の卒業式は、廃線となったかつての最寄り駅のホームを貸し切りにして行われる。だからといって、鉄道関係の専門学校というわけではない。すでになんの役にも立たない駅が依然として取り壊されず保存されているのは、我が校の卒業式のためであるという説もある。 ホームの端から端まで、パイプ椅子を二列にずらりと並べて卒業生が着席する。それを送る在校生のほうは、ホーム下の両脇を走る線路上から、ホームを見上げる形でのオールスタンディング形式となっており、…

  • 2020/12/07 17:12
  • 2020/12/07 16:14
  • 2020/12/07 12:55
    短編小説「脂肪動悸」

    いつもの道を、歩いていた。天井裏かもしれない。天井裏だとしたら、頭がつっかえるはずだがそんなことはなかった。ならばそれは駅へと向かういつもの道だ。 だけどねずみを見かけたような気がする。ねずみは天井裏にいるべきだ。いやどぶの中という可能性もある。なにしろどぶねずみというくらいだから。 じゃあどぶねずみ以外のねずみはいったいどこにいるのか。天井裏ねずみというのは聞いたことがない。必ずしも名前に住んでいるエリアを明記する必要もない。ねずみの話をしたいわけではない。むしろまったく興味はない。路傍にもねずみはいる。ならばやはりいつもの道か。 駅へと続く道。なぜ行き先を駅と言いきれるのか。山かもしれない…

  • 2020/12/06 08:54
    ダイブ

      おれは大きく息を吸い込み、潜った。 これはおれ自身の戦いだ。 もうこれ以上潜れないところまで、潜った。 こんなに潜ったのは初めてだ。 息が苦しい。 肺が圧迫され、頭に血の気が回ってくる。 く、くるしい……。 しかしやらねばならんのだ。 おれは負けない。 負けないぞ! このままの状態を維持することに、全神経を集中させた。 何秒耐えれるか、数を数える。 おお! 新記録だ!! ついにやった。 おれはや...

  • 2020/12/05 15:50
    短編小説「注文の多い料理店にいる記憶力の悪いウェイトレス」

    休日の朝、のっそりと起き出して「中身の乏しい冷蔵庫」を確認した「思い込みの激しい悦郎」は、とりあえず遅めの朝食をとるため、駅の向こうにある「注文の多い料理店」の「シェフの気まぐれが激しいランチ」をいただきに向かうことにした。 しかしいざ「遮断機の鋭利な踏切」を渡り、「注文の多い料理店」があるはずの一角へとたどり着いてみると、何度か訪れたことのある「注文の多い料理店」はどこにも見当たらなかった。「思い込みの激しい悦郎」は、どうやら勝手に店の場所を駅の向こうにあると思い込んでいたのである。 賢明にもそのことに気づいた「思い込みの激しい悦郎」は、再び「遮断機の鋭利な踏切」をスレスレのところで渡り、1…

  • 2020/12/05 08:49
    天国と地獄の狭間で

      ここは天国と地獄の狭間。 死んだ人間が天国へ行くか地獄へ行くか、生前の行いの善し悪しで、審判人に判断されるのだ。 どうやら俺は死んだらしい。 56歳という若さで死ぬなんて、俺にはまだやり残した仕事があるというのに、病気には勝てなかったか。 俺はある大きな企業の社長で、信用も厚かった。 しかしその分、多大な責任と負担がそこにはあった。 俺は皆のために、そして家族のために、必死で働いた。 無理をしす...

  • 2020/12/04 23:03
  • 2020/12/04 19:07
    短編小説「親切な訪問者」

    とある休日の昼下がり、私は自宅で時間指定の宅配便を待っていた。指定した時刻は十四時~十六時。そしてラジオの時報が十四時を知らせた瞬間、早くも部屋のインターホンが鳴った。 こんなことは珍しい。こういうのはたいがい中途半端な、最も来られては都合の悪いタイミングで来ると相場が決まっている。たとえばちょうど開始時刻から四十分ほど過ぎてトイレに行きたくなり、さらにそこから十五分ほど我慢していま行くべきかまだ待つべきか大いに迷った挙げ句、我慢の限界が来て用を足しはじめたところで鳴ったりするものだ。 排便を途中で切りあげるほど難しいことはない。小ならば残尿感、大ならば残便感さらには拭き残しを抱えたまま玄関に…

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