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十余年が過ぎた。鉄斎の妻は心労が祟ったのか一樹が生まれ二人目の子である比佐乃が生まれると間もなしにこの世を去っている。鉄斎も齢に勝てず伏せこみ勝ちになると身代を娘婿に譲った。何もかもが二人の勝手になり、子も福々と育っている。絵に描いたような幸せに浸りこんでいる波陀羅の胸の中に瑣末な思いが生じて来たのもこの頃であった。(この波陀羅こそが織絵であろう?陽道の妻はこの波陀羅であろう?)幾年の日々を陽道と供に過ごし、織絵の身体もすでの波陀羅そのものであった。その陽道の望むままに子を成し、産の痛みにも耐えてきた。波陀羅こそ織絵であるのは間違いのない事であった。十年余りの歳月が波陀羅の女心に波陀羅として愛されたいという哀しい思いを膨らませていった。十年余りの歳月が、波陀羅の中に小さな自信を育ててもいた。陽道も波陀羅を...波陀羅・・11白蛇抄第5話
鬼の退治がすむと畳に平伏し頭を擦り付ける陽道の姿があった。「気が付くのが遅う御座いました。何もかも、陽道の手落ちで御座います」と、言われれば鉄斎も責める気になってしまうというものである。「何の為に着いておってくれおった。孕み落しも出来ぬ程になりて、それでのうても鬼に嬲られた娘の所にどう、婿を取ればよい。世間様にどう・・・」図らずも鉄斎の口から陽道の思惑とする所が言い出されると「この陽道が先に織絵さまと、深い仲になってしもうた事にして下されませぬか?」「な・・・何?」「私の落ち度を拭う、言い分けがましい事では御座いますが世間様の手前、この陽道が織絵様と先に深い仲になってしもうたので鬼が劣情に狂うて現れたという事に」「そ、それでは・・・・」陽道が鬼に犯された娘の責任を取らさせてくれと言っているのだと鉄斎にも判...波陀羅・・10白蛇抄第5話
――邪鬼!―――その姿を見つけたのが伽羅である。昨日の事であった。新羅が怒鳴りながら伽羅の住処に入り来るとあちらこちらを探し回る。邪鬼丸を探しているのである。『新羅・・・・』ここに隠れておらぬと判ると新羅は伽羅をといつめる。「邪鬼を何処にかくした」「来ておらぬ」「嘘を言え」邪鬼丸の事だ。又、人間の女子の所に行っておるのだと、伽羅は思ったが新羅の腹の膨らみにそれを堪えた。新羅はそれを知らない。子まで宿しおるのに邪鬼の相手が伽羅だけで無く、人間にまで手をだしていると言うのは忍びなかった。「隠しておるに。他に落ち合う場所を作っておるのか?そこに居るのか?」「知らぬ。ほんに知らぬ」「もう・・・十日も帰って来ぬのじゃ」遅うなっても帰って来る。まかり間違っても次の日の朝には何時の間にか新羅の側に居た。ここに邪鬼は、必...波陀羅・・・9白蛇抄第5話
「名前は?」「……」「生まれはどこだ?田舎はどこだ?」「……」「お前がやったんだろー!」「……」「先輩、それはいけません。早まっては」「おお、そうだ。しかしなかなかしぶとい奴だ」「無口な奴ですね」「おい、お前のことを言ってんだぞ!」「……」「おふくろさんは元気か?元気にしてるのか。お前のことを気にかけてるんじゃないか。田舎におふくろさんはいるのかってんだよ」「暑くなってきたな。いよいよ夏も本番だな。エアコンつけっぱなしだと光熱費も高くつくぞ。なあ、お前も色々大変だったんだな。野球は好きか?好きじゃないか。サッカーか?どうだ。映画とか見るのか。読書はどうだ?漫画とかそっちの方か?山とか登ったりしてるのか?釣りの方か?アウトドアは嫌いか?えー、どうだ。どっちでもないか。休みの日は何してるんだ?おい、いったい何...サイレント・アンサー
冒険の旅へ出かけよう! 宝の島 続編 第16章 敵か?味方か?…23
まるで、スパイごっこみたいだ。(まさか、ジュンペイに遊ばれているのか?)そんな嫌な予感がするけれど、「あ~あ、お腹が空いたなぁ」ジュンペイがわざと大きな声を…
どうやら清子は…あの当時のことを覚えているようだ。「なに?何のこと?」 そういえば…と思い当たることがある。なぜだかこの町に越して来た時…近所の人たちの反応…
あれは…お義父さんだったのか?シンデレラの娘たち 第1章 ママの秘密…14
こんばんは!暇人です。今日はですね、ダンナの実家に行ってきました。もう暑くて…つくなり、はぁはぁ(;´Д`)ハァハァおびただしい汗を見て義弟くんのTシャツを貸…
どうもポテトです。 最近キーボードがチャタリングして「U」を打つとめっちゃUが出てくるようになってしまった。今なら連打速度大会でいい線いきそうだ。
ご無沙汰しております、と前回も書いたような気がします。 まだこのブログを読んでくださる方はいるのでしょうか… あ、そうだ。こういう時に、書かないといけないこ…
ただおが戻って来て三日後のとある飲み屋 「ただお残留に祝杯だ!!」 『カンパーイ』とグラスに注がれた飲み物を揺らし軽くぶつけ合う。一丁だけアルコール入りで他の皆はジュース類だ「どうしたいざない。冴えん顔だの」「まあ…気分的にヘコむ仕事控えてて…」一人浮かない顔のいざないは、十五日後に大金が飛ぶ事に萎えている「あれ(…
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