有馬は湯に浸かりながら雑念を湧かせた。ああ、いい湯加減だな…という雑念ではない。^^俺は今年で七十五になる。俺の寿命はいつまでだろう…という雑念である。「いいお湯ですな、有馬さん…」一緒に来た同じ老人会の鹿尾が、隣から赤ら顔で小さく声をかけた。「ああ…いい湯加減ですな…」二人が露天風呂に浸かってから、すでに十五分ばかりが経っていた。「鹿尾さんは、今年でお幾つになられました…」「ははは…有馬さんより二つ上になります…」「といいますと、七十七ですか…」「はい、喜寿で…」「それは、お目出度い…」「お目出度いかどうか…」「ははは…『門松や三途の川の一里塚目出度くもあり目出度くもなし』ですか…」「さようで…」「お互い、今を明るく過ごしましょう。ははは…」有馬は、寿命は考えても仕方がないか…と、浮かべた雑念を忘れるこ...雑念ユーモア短編集(88)寿命
古文書を読むには、古語と古典文法を知らなければならないが、それは活字化された古文書であって、それだけでは、手書きの古文書は手に負えない。 最大の難関は、変体仮名である。明治中期に使用する仮名文字が制限される以前は、漢字の草書体が自由に、仮名文字として使われてきた。「江」(え)や「志」(し)など、元の漢字の字体に近い物や、現在の仮名文字に近い物は察しが付くが、「あ」と読む変体仮名には、元の漢字…
橘はネットで商品を購入した。ところが、その商品を使用しようと設置を業者に依頼したところ、業者が、液化天然ガス取締法のコンプライアンス強化で設置できません…と攣(つ)れなく断られてしまった。購入商品は宙に浮いてしまったのである。¥30,000近い商品だったため、橘は宙に浮かせておくのも如何(いかが)なものか…と思慮し、ネット販売先でキャンセル手続きをした。そして、手続きが業者から了承されたため宅配便で返品した。橘は、やれやれ、これで返金される…と安堵(あんど)した。ところが、である。そのひと月後、とある買い物をして預金通帳から額を引き出したところ、クレジット会社から購入商品の全額が引き去られていたのである。橘は、?と頭を傾(かし)げた。キャンセルで商品は返品したのだから引き去られるはずがない…と考えた訳だ。...雑念ユーモア短編集(87)返金
今夜も…、お逢いできて嬉しいです!高校時代の「還暦同窓会」というタイムマシーンに乗って来ました。わたしは、ほぼ30年ぶりに顔を合わせた友達がほとんどでしたが、…
「肯わぬ者からの手紙」第60信(『週刊金曜日』2024年4月26号)[全文]
『肯わぬ者からの手紙』第60信戦争準備の完成も間近か空気に瀰漫する集団催眠 (『週刊金曜日』2024年4月26号)[全文] 遅くなりましたが、以下、『...
古川美佳「『人間が美しくある』ために/藝術は世界の破滅に抗し得るか? ──死の国からも、なお『希望』を語る」(『週刊金曜日』2024年3月1日号)[全文]
古川美佳「『人間が美しくある』ために——《藝術は世界の破滅に抗し得るか? 死の国からも、なお『希望』を語る 対談 山口泉×洪成潭」(『週刊金曜日』2024...
お昼少し前に燕三条駅に到着した。燕市は洋食器の生産で有名である。ナイフとフォークのモニュメントが飾ってあった。駅前は閑散としており、目の前を高速道路の高架が走っている。魚料理の店が定食をやっていたので、入ってみることにした。僕は四色のまぐろ丼、友人はサバカツの定食を食べた。あらの味噌汁はおかわりをした。 一時間後、弥彦線の燕三条駅に向かう。新幹線が止まる駅なのに無人駅である。ホームに下りると…
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